デビュー後しばらくの間の私の読者には、官僚が多かった。それも、帰国して会うのが局長や次官ばかりではダメですよ、日本を実際に動かしているのはボクたちなんだから、とまで言う、30代の生意気な官僚たち。「今井尚哉首相秘書官独占インタビュー」と銘打った記事を読んでいて、思い出したのは40年昔の彼らだった。
独占インタビューと言っても、文藝春秋の編集部が企画して実現したのではない。
「私から文藝春秋に“出頭”するとは思いもよりませんでした。でもどうせ批判されるなら正当に批判されたいと思って」4月下旬、こう皮肉を言いながらやってきたのは、この5年4カ月、メディアのインタビューには一切応じたことのない、今井首相秘書官その人だった。というのであったのだから。
円満でまっとうな人格者である大松編集長は、非円満で非まっとうな今井氏のこの突然の申し出にはびっくりしただろう。
それでも大松さんは、ジャーナリストである。直ちに対策を立てたのだろうが、それはいつもとはちがうページ造りを見るだけで想像できた。とは言ってもこの後に展開するインタビュー記事の主導権が今井氏側にありつづけたので、一問一答というより彼の独り舞台で終始する。
スキはまったくなかった。ただ一箇所を除けば。それは、安倍総理にもまちがいなく道義的責任があり、だから総理にも進言して、国会で謝罪してもらいました、と言った箇所である。私が聞き役だったら、ここを突いていただろう。
それで事態は収拾できると思っていらしたのか。それともここまで事態が悪化したからには、肉を斬らせて骨を断つ式の戦法でしか逃げきれませんと進言したけれど、総理が受け容れなかったのですか、とでも言って。
有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。
記事もオンライン番組もすべて見放題
初月300円で今すぐ新規登録!
初回登録は初月300円
月額プラン
1ヶ月更新
1,200円/月
初回登録は初月300円
※2カ月目以降は通常価格で自動更新となります。
年額プラン
10,800円一括払い・1年更新
900円/月
1年分一括のお支払いとなります。
※トートバッグ付き
有料会員になると…
日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事、全オンライン番組が見放題!
- 最新記事が発売前に読める
- 毎月10本配信のオンライン番組が視聴可能
- 編集長による記事解説ニュースレターを配信
- 過去10年6,000本以上の記事アーカイブが読み放題
- 電子版オリジナル記事が読める
source : 文藝春秋 2018年07月号