一作家の深読み?

日本人へ 第181回

塩野 七生 作家・在イタリア
ニュース 社会

 デビュー後しばらくの間の私の読者には、官僚が多かった。それも、帰国して会うのが局長や次官ばかりではダメですよ、日本を実際に動かしているのはボクたちなんだから、とまで言う、30代の生意気な官僚たち。「今井尚哉首相秘書官独占インタビュー」と銘打った記事を読んでいて、思い出したのは40年昔の彼らだった。

 独占インタビューと言っても、文藝春秋の編集部が企画して実現したのではない。

「私から文藝春秋に“出頭”するとは思いもよりませんでした。でもどうせ批判されるなら正当に批判されたいと思って」4月下旬、こう皮肉を言いながらやってきたのは、この5年4カ月、メディアのインタビューには一切応じたことのない、今井首相秘書官その人だった。というのであったのだから。

 円満でまっとうな人格者である大松編集長は、非円満で非まっとうな今井氏のこの突然の申し出にはびっくりしただろう。

 それでも大松さんは、ジャーナリストである。直ちに対策を立てたのだろうが、それはいつもとはちがうページ造りを見るだけで想像できた。とは言ってもこの後に展開するインタビュー記事の主導権が今井氏側にありつづけたので、一問一答というより彼の独り舞台で終始する。

 スキはまったくなかった。ただ一箇所を除けば。それは、安倍総理にもまちがいなく道義的責任があり、だから総理にも進言して、国会で謝罪してもらいました、と言った箇所である。私が聞き役だったら、ここを突いていただろう。

 それで事態は収拾できると思っていらしたのか。それともここまで事態が悪化したからには、肉を斬らせて骨を断つ式の戦法でしか逃げきれませんと進言したけれど、総理が受け容れなかったのですか、とでも言って。

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source : 文藝春秋 2018年07月号

genre : ニュース 社会