西山千明、中村鋭一、亀渕友香、杉内雅男、サルバトーレ・リーナ

蓋棺録

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 経済学者・西山千明(にしやまちあき)は、アメリカの「新自由主義」経済学を日本にもたらし、その正確な理解につとめた。

 生涯、崇敬したのは師であるフリードリヒ・ハイエクだった。師の学説に対する誤解には敢然と抗議し、かつて新自由主義の「同志」だった評論家とも激しい論争を行なった。「責任回避を繰り返す専門家や評論家がのさばるのを、私たちは許してはならない」。

 1924(大正13)年、福岡県に生まれる。父は鉱山技師。旧制一高を受験するが二度失敗。山にこもろうとしたところ、家族に連れ戻されて立教大学に入学する。召集され予備士官学校をへて少尉、終戦のときは厚木にいた。

 立教大学に復学して経済学を学んだが、マルクス主義に魅せられ学生運動に参加した。しかし、疑問をいだいて運動を離脱。同大の助手だったとき、シカゴ大学法学部に奨学金で留学する話にとびついて渡米する。ところが、毎日、判例ばかり読まされて嫌になり、政治学部に転部したものの、奨学金は切られ、心は満たされなかった。

 そんなとき、大学の討論会でハイエクが有名知識人を次々に論破するのを目撃して、「あの論理力を盗もう」と決意する。ハイエクのゼミに入って、ハイエクの著作はもとより多くの古典を読まされるうちに、「ミイラ取りがミイラになってしまった」。結局、ハイエクの下で、シカゴ大学に8年間もいることになる。

 この間、ハイエクのゼミに出入りしていた少壮経済学者ミルトン・フリードマンにも興味をもって、1年ほど彼の研究室にお世話になった。「ハイエクが先生なら、フリードマンは兄弟子で、先生でもあるわけです」。

 62(昭和37)年、ハイエクが西ドイツのフライブルク大学に移ったとき、日本に帰国した。「当時、日本にはマルクス経済学とケインズ経済学しかないような時代でした」。ところが、80年代になると、「異端扱いされていた経済学が、世界の主流になった」。

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source : 文藝春秋 2018年01月号

genre : エンタメ 芸能