内閣府の調査によれば「40~64歳のひきこもり状態の人」は全国に61.3万人で、15~39歳の「若年ひきこもり」と合わせて100万人を超えたという。だが秋田県藤里町で、地域からの情報提供を受けたソーシャルワーカーが「あなたのお宅に、ひきこもっているお子さんがいらっしゃいますよね?」と一軒一軒確認したところ、人口3800人、65歳以上が43.6%という典型的な「高齢化した地方の町」にもかかわらず、「18歳以上55歳未満で、定職をもたずに2年以上経過した者」が103人もいることがわかった。
対象年齢に占める「ひきこもり」比率は8.74%、男性が女性の約2倍で、40歳以上が半数ちかくにのぼることも明らかになった。
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日本の18歳以上55歳未満の人口は5703万人(2017年)、その8.74%は498万人だ。都市と地方では環境が異なるとしても、この数字は衝撃的だ。——内閣府調査は64歳までを対象に「ひきこもり状態になって6カ月以上」の人数を推計しているが、藤里町が調べたのはシルバーバンク(高齢者就労支援事業)の対象にならない55歳未満で、なおかつ2年以上働いていない町民なのだ。
「ひきこもり500万人」なんてありえないと思うかもしれないが、藤里町の結果を男女別で見ると、「ひきこもり率」は男が10%強、女が5%強になる。地域の子どもが集まる公立中学校の40人学級(男女同数)で、男子生徒2人、女子生徒1人が55歳までにひきこもりになると考えれば、これが荒唐無稽な数字とはいえないことがわかるだろう。
男にひきこもりが多い理由
内閣府の調査では中高年のひきこもりの4分の3は男で、男女差はさらに大きい。これは女性が家にいても「家事手伝い」などと見なされるからだろうが、この問題に明らかな性差があることは否定できない。女の子の親も不安だろうが、男の子の親の多くは、自分の子どもがいつひきこもりになってもおかしくないと思っているのではないだろうか。
なぜ男の方がひきこもりになりやすいのか。私はその理由を「男女の性愛の非対称性」だと考えている。
進化生物学では、オスとメスで生殖のコストが異なる場合、オスの競争がはげしくなると考える。これはほとんどの哺乳類にあてはまるし、鳥類や魚類、爬虫類、昆虫ですら、メスがオスを選択し、オスがメスをめぐって競争する種は多い。もちろん、ヒトも進化の例外ではない。
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source : 文藝春秋 2019年8月号