映画監督・鈴木清順(すずきせいじゅん)(本名・清太郎)は、作品の難解さで日活をクビになったが、後に名監督として称賛された。
1980(昭和55)年の『ツィゴイネルワイゼン』は映画ファンを驚かした。俳優たちの会話はどこか不自然で、ストーリーも飛躍が大きく、最初の公開場所はドーム型テントだった。しかし、繰り広げられるイメージは確実にファンの心に残った。
23(大正12)年、関東大震災の年、東京の日本橋に生まれる。父親は自転車用のベル製造業者だった。商業学校から旧制弘前高校(現・弘前大学)に入学するが、学徒出陣で召集される。フィリピンと台湾を転戦し、敗戦のときには台湾の山中にいた。
復学して東京大学を受験するが失敗。文化人たちがつくった「鎌倉アカデミア」の映画科に入って、松竹の試験を受けると1600人中の8人に入る。助監督を務めたのちに日活に移り、56年に『港の乾杯、勝利をわが手に』で監督デビューを果たした。
『野獣の青春』や『けんかえれじい』など一風変わったアクション映画で注目されたが、67年の『殺しの烙印』を最後に、「わからない映画ばかりつくる」との理由で解雇される。その後、しばらくはテレビドラマやCMの製作で糊口をしのいだ。
77年、『悲愁物語』で映画に10年ぶりに復帰。劇画原作者・梶原一騎の会社に出資してもらおうと自ら会いに行った。「恵まれねえ監督なんだってね」「じゃ、恵んでくれるんですか」「おお、いいよ」。
3年後には、異色のプロデューサー荒戸源次郎がついて『ツィゴイネルワイゼン』を製作し、内外の映画賞をいくつも受賞した。その後、『陽炎座』と『夢二』を撮った。この3本は「浪漫三部作」と呼ばれるようになる。
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source : 文藝春秋 2017年05月号