中国を敵に回すことはない

特集 トランプは破壊者か革命家か

出井 伸之 クオンタムリープ ファウンダー&CEO 元ソニー会長兼CEO
ライフ 政治 国際
出井伸之氏 ©文藝春秋

 先日の日米首脳会談の直前、長女イバンカさんのツイッターに、娘アラベラちゃんが中国服に身を包んで中国語で歌う動画が投稿されました。私はそれを見て、なるほどと思いました。中国人の友人によると、その動画でのアラベラちゃんの発音は素晴らしいそうです。イバンカさんに対する父親の影響力を考えると、嫌いな国の言葉を習っているなんて考えにくい。「トランプ政権は本当は中国との関係を重視している」―そういったメッセージを中国に送ったものと考えています。

 また同じく日米首脳会談の直前には、習近平国家主席へ「建設的な関係構築」を表明する内容の書簡を送り、また電話会談で「一つの中国」の尊重を確認するなど、中国との協調をアピールする動きが一気に起きました。日米間の距離を縮める準備を整えていた日米首脳会談に先んじて行うことで、中国が孤立するような構図を回避する根回しになったと解釈しています。

 主要閣僚の発言などから、トランプ政権が反中だとする報道も多いですが、一つ一つの動きからは、実は中国に対しては礼節を重んじた、大人の関係を続けているように見えます。

 米中の関係は外からうかがい知れないほど、奥深いものがあります。

 私は毎年10月、北京で開かれる清華大学の経済管理学院顧問委員会に出席しています。この会は朱鎔基元首相を発起人として10数年前にできたもので、私は初代議長のポールソン(G.W.ブッシュ政権の財務長官でゴールドマン・サックス元CEO)に誘われ、初年度からほぼ毎年参加を続けています。

 この顧問委員会のメンバーにはいつも驚かされます。ハーバードやMITなど優れた大学の学長のほか、経済界からはティム・クック、イーロン・マスク、ジャック・マー、カルロス・ゴーン、テリー・ゴウ、ノキアのリスト・シラスマなど世界的経営者、またゴールドマン・サックスの歴代CEOや各国家ファンドCEOなど金融界からも多数の大物が参加。世界中の錚々たる顔ぶれが一堂に会する場になっています。日本人はなぜか私1人です。

共産党上層部とのつながり

 この大学の委員会には、習近平政権下で腐敗撲滅の指揮を執る王岐山常務委員も、北京市長に就いていた頃から参加しています。彼は習近平の側近として知られていますが、もとは朱鎔基の薫陶を受けた人物。金融の世界に顔が広く、ウォールストリートにも知人が多いのです。

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source : 文藝春秋 2017年04月号

genre : ライフ 政治 国際