立川談志へ あばよ、さよなら談志師匠

特別企画 弔辞 鮮やかな人生に鮮やかな言葉

エンタメ 芸能

 たてかわ だんし 享年七十五。歯に衣着せぬ発言と破天荒さで「落語界の風雲児」と称された。家元として立川流を創始、独自の芸風で後進を育成した。平成二十三年十一月二十一日、喉頭癌で死去。談志を「人生の友」と呼んだ石原慎太郎(いしはらしんたろう)が告別の辞を述べた

石原慎太郎氏と立川談志師匠 ©文藝春秋

 談志師匠。ご遺族の依頼で弔辞を述べることになりましたが、いまさらもう弔辞じゃねえよな。君が亡くなる3日ほど前に、君と奥さんとお嬢さんもいらっしゃらなかったので、いらした女性の秘書さんに聞いたら、もう声も出ずに話せないというのでいいから俺が一方的に話すから受話器を彼の耳元に持っていって俺からだといってくれ、といいました。そして最初に「おい談志お前もそろそろくたばるらしいな」といった。

 なあ、それから始まって弔辞みたいなというか引導みたいな、いたわりじゃなしに、まだ生きている君との間柄だから、あれは俺が俺なりに君に渡した引導だったかもしれないな。

 俺も今までいろんな人間といろんな会話をしてきたけれども、あれは俺の人生の中で最も印象的な心にしみる会話だったよ。

 まあいろんなことをいったけども、お前さんも、大体俺たちはいつも憎まれ口をたたいてばかりだったな。俺はいつも君のことをお前さんといい、君は俺のことをあんたといい、調子のいいときは、何か物をねだったり頼んだりするときはアニさんなんていいやがったけども。

 まあ、お前さんと俺の間だから言いたいこと言うけども、とにかく一生続いてしゃべりすぎたんだから、神様がもうお前生きている間にちょっと休めという、まあ神の配慮だったと思って勝手なこといいました。

 俺があの君に電話した理由は、俺もその頃、今の仕事をとっくに辞めるつもりでいたんだけれど、諸般の事情でまた、四度目の東京の家元をつとめていた。大体お前さんもおれも一匹狼なんだから家元なんてやるこたねえんだ。互いに一人でまっすぐ傍若無人に生きていけばいいと思っていたんだけども、まあ君も家元になってそれでまあ俺もからかったりしたな。

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source : 文藝春秋 2014年12月号

genre : エンタメ 芸能