現地調査、史料収集、談話聴取……御事績をたどった編纂者たちのドラマ
『実録』の編纂は平成2(1990)年4月にスタートした。
当初、完成までの目標とされていたのは「16年計画」。史料集めに8年、執筆に6年、残りの2年は校正や全体の調整に使われる予定だった。しかしその後、計2回8年延長され、完成までに約24年を費やした背景には、外部からはうかがいしれない宮内庁内部の事情があった。
編纂の中心となったのは宮内庁書陵部編修課。ここに在籍するのは研究職の職員ばかり、いわば歴史の専門家集団だ。だが『実録』の計画が持ち上がった頃は古代史を専門とする職員が多く、明治以降の近現代の歴史に詳しい者はほとんどいなかったという。このため『実録』編纂のために公立の博物館や国の史料館などから近現代史を専攻する若手研究者が急遽、採用された。
編纂作業は、(1)昭和天皇が生まれた明治34(1901)年から即位の礼が行われた昭和3(1928)年まで、(2)昭和4年から終戦の20年まで、(3)日本国憲法が公布された21年から41年まで、(4)42年から64年の大喪の礼までの4部に分けられ、それぞれ担当者が決められた。原則として職員はそれぞれ決められた期間を最後まで担当するルールで、史料収集から調査研究、執筆までを受け持ち、各部ごとのとりまとめの責任者が決められ、全体を編修課長が統括することになった。
ところがごく初期から計画はつまずく。平成2、3年ころにスカウトされた若手研究者が短期間のうちに宮内庁を辞め、大学などに転職する例が相次いだのだ。
書陵部OBの1人はこう話す。
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source : 文藝春秋 2014年10月号