松山英樹が語る「わがライバル、石川遼」

柳川 悠二 ノンフィクションライター
エンタメ スポーツ

メジャー制覇に近づく松山、不振に喘ぐ石川。ライバルの明暗はなぜ分かれたのか──

松山英樹選手(左)と石川遼選手 ©時事通信社

 まるで戦意を喪失したボクサーだった。八月二日、米国ネバダ州で行われたリノ・タホオープン二日目。石川遼(21)は14番のセカンドショットでグリーンを外すと、クラブを放り投げ、ため息と共にうなだれ、最後には芝の上に寝転がってしまう。

 一つ前のホールでダブルボギーを叩き、この14番から17番まで四連続ボギーと石川はまさにサンドバッグ状態。予選通過圏内から大きく脱落した。明らかに集中力を欠き、自身への不甲斐なさに心が折れていた。米国PGAツアーのシード権を手放す危機に瀕しながら、戦うことを放棄したのである。

「いったい、何のために練習してきたんだよ」

 米国転戦中も常に帯同し、傍らで支えてきた「チーム石川遼」の一人がつい漏らしたのも頷けた。リノに乗り込んでからというもの、石川はグリーン回りのアプローチ練習に多くの時間を割いていた。だが、その短い距離のアプローチで「ちゃっくり(ボールの手前を打つミスショット)」がこの日だけで四度もあったのだ。これほど単純ミスを繰り返すのは、技術以上に内面に問題があるのは明らかだった。

 日本から応援に駆けつけていたゴルフメーカー関係者は「この二年でこれほどゴルフが下手な遼くんは見たことがない」と打ち明けた。

 80の大叩きは今季四度目。米国と日本あわせて二十二大会に出場しながら通算十一度目の予選落ちとなった。

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source : 文藝春秋 2013年10月号

genre : エンタメ スポーツ