歌人の与謝野晶子(1878〜1941)は、歌集『みだれ髪』で脚光を浴び、生涯で約5万首を残した。日露戦争に出征した弟への詩「君死にたまふことなかれ」が広く知られ、教育者でもある。与謝野家に伝わる逸話を孫の達(とおる)氏が語る。
祖母は私が1歳の時に63歳で亡くなっており、今は亡き兄・馨(元衆院議員)と「教科書に出てくる人という存在だね」と語ったことがあります。ただ親族から折に触れて思い出話を聞く機会はありました。
祖母の次男で後に外交官になった父・秀(しげる)は、晶子と歌人の祖父・鉄幹が貧しい生活をしていた時期に生まれ育っています。長男である伯父・光は小学生の頃から養鶏をして卵を売り、父も子供の時から晶子に頼まれて出版社へ原稿の集金に走っていたそうです。
晶子は12人もの子を産みながら家計を担い、創作のみならず教育・社会活動までこなす大車輪の働き。不器用で出版にお金をかけてしまう鉄幹を支え、ずっと愛していました。
伯父が成人した頃、晶子がお弟子さんから「光さんは美男子ですね」と言われたことがあったそうです。普通の母親なら謙遜するところでしょうが、晶子は平然と「いえいえ、寛(鉄幹の本名)の方がずっと美男子でしたよ」と答えたといいます。
よく言われるような情熱家であるだけでなく、人と違う言動を取るのを恥ずかしがったり照れたりしない。パーティに着ていけるような衣装がない時には、手持ちの着物に自分で絵柄を描いたこともあったと聞きました。
私が生まれた時、母が晶子の元へ連れて行ったら「あらあら、おませな顔をして、小学4年生みたいね」と言ったそうです(笑)。
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source : 文藝春秋 2023年1月号