芥川賞作家で、エッセイや対談の名手としても知られた吉行淳之介(1924〜1994)。妹で女優の吉行和子氏が、母で美容家のあぐり、末妹で芥川賞作家の理恵とともに過ごした家族の日々を明かす。
「驟雨」をついこの間読んだ。昭和29年に芥川賞を受賞した作品だ。
現在とは比べものにならないくらい地味に報道されたが、それでも、お兄さんが小説家だったと知った人達の為に、私はとても居心地が悪くなった。
しかも「娼婦」、いやあね、というのが多い。困った。
私は真面目な新劇の研究生、世の中の役に立つ作品を創っている側に属していた。
妹の理恵はミッションスクールの中学3年生、校庭で友達と話していたら、先生がその友達を連れていってしまった。それ以来、周りから白い目で見られ、友達はいなくなった。
しかし、そんなことがあったから兄の小説を読まなかったのではない。
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source : 文藝春秋 2023年1月号