小心者であるが、人を惹きつける不思議な力を持った男――。それが麻原と対峙したときの印象だ。

　教団の拠点があった山梨県上九一色村を捜索中、ふと、ある光景を思い出した。約2週間前、第6サティアンを監視していた時のこと。信者が3階の窓から顔を出し、壁の空気口にカバーを取り付ける姿だ。「何かある」。班長らと2階にある麻原の三女の部屋に入った。抵抗する三女に構わず、天井を素手でぶち破り中を覗くと、暗闇の先に棺桶にも似た囲いがある。囲いの真下に移動し壁を金槌で叩き壊すと、中に人影を見た。

「麻原か！」

　駆けつけた総指揮官の呼びかけに、麻原は「はい」と答えた。臆病な彼が隠れるなら、溺愛した三女の近くだろう。その直感は正しかった。

　「重くてすみません」

　捜査員に抱えられながら姿を見せた麻原は、紫の法衣を纏い、足をブルブルと震わせていた。私が手錠をかけた瞬間も抵抗することなく、ヘッドギアに電流は流れていなかった。

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