歴代3位の優勝31回、53連勝という大記録をのこした大横綱、千代の富士(1955〜2016)。名勝負を繰り広げた元大関のKONISHIKI(小錦)氏が語る。
千代の富士関との初対戦は、1984年の九月場所。蔵前国技館最後の本場所でもありました。僕は前頭六枚目で、プッシュプッシュと4、5発の突き出しで勝ったんです。全然緊張しなかったな。来日3年目で言葉も何も知らなくて、千代の富士関も「相撲界で一番上の人」とだけ。この場所では横綱の隆の里関と大関の若嶋津関にも勝ったので「黒船襲来」と言われたみたいだけど、その意味もわからない(笑)。
それから千代の富士関は、弟弟子の北勝海関(現八角理事長)を連れて、僕のいる高砂部屋に出稽古に来るようになりました。一番強い人と毎日のように稽古ができて、僕にとってもよかった。いかにスピードに負けない立ち合いをするか、それだけを考えていました。仕切り線から下がって横綱の動きをよく見てね。対戦成績は僕の9勝20敗です。
相撲が強いだけでなく、態度も素晴らしかった。誰もが“大将”と呼んでいたけど、ぴったりですよ。まったく偉ぶらない方で、巡業のバスではいつも本を読んでいました。
世間話や相撲の話、あと男同士の言えない話もしましたね(笑)。
「人をよく見ろよ。強い時はいろいろな人が寄ってくるから気をつけろ。弱くなったら離れていくぞ」と言われたのを覚えています。酒の飲み方は豪快で、ディスコでもよく一緒に踊ったなぁ。リズム感も良くて上手でした。
僕がタレントに転身してからも、大将が率いる九重部屋に、海外からのお客さんを何十回も連れて行きましたが、ちゃんこを勧めてくれて、「外国の人は朝稽古を真剣に見てくれるから俺もうれしいんだよ」と、すごく大切にしてくれたんです。
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source : 文藝春秋 2023年1月号