日本人信者らの莫大な献金はロンダリングされて北に送金された─
北朝鮮が日本に向けて大量のミサイル発射実験を続けている。2022年には、100発近くが発射された(11月29日時点)。これは過去最も多かった2019年の25発を優に超え、しかもミサイルの性能は飛躍的に進化している。
11月18日に打ち上げられた大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星17型」の射程距離は米国東部地域まで及び、これまでとは次元の違う脅威を世界に与えた。発射実験の際、金正恩総書記は今まで公式の場には出さなかった娘をあえて発射現場に連れて行く余裕を見せ、「核兵器の先制使用も可能」と公言した。
それにしても、厳しい経済制裁を受けてきた北朝鮮が、なぜ核兵器やミサイルの開発を続けることができたのか。北朝鮮の外貨獲得源は、朝鮮総連を通じた日本からの送金、武器や麻薬の密輸、さらに仮想通貨の窃盗など多岐に及ぶが、忘れてはならないのが世界平和統一家庭連合(以下、統一教会)からの資金提供である。
1991年12月、統一教会の文鮮明教祖は北朝鮮を訪問し、金日成主席(当時)と会談した。統一教会は韓国の国家安全企画部(KCIA。現在の国家情報院)と密接な関係を持ち、国際勝共連合を主宰して強烈な反共を掲げ、共産主義者を「サタン」として攻撃してきた。それだけに、2人が抱擁して盃を交わすシーンは世界に衝撃を与えた。
だが、この会談は無償の善意で実現されたことではなかった。
米国政府は北朝鮮と統一教会の接近を危険視し、米国防総省(ペンタゴン)情報局(DIA)は密かに両者の動向について監視を続けてきた。近年、DIAが作成していた報告書の一部の機密が解除され、筆者は複写を入手することができた。そこには、統一教会がトップ会談の見返りとして北朝鮮に巨額の資金を提供していたと記されているのである。
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source : 文藝春秋 2023年1月号