異邦人が訊く“戦争”
著者のエドガー・ポーターは、別府市所在の立命館アジア太平洋大学で2006年から2016年まで教鞭をとった、中国を専門分野とする歴史研究者である。第2次大戦終結後に、同地にアメリカが占領軍本部を置いたことを知って調査・研究を思いたった。共著者である妻のランイン・ポーターは、作家・翻訳家で、夫とともに日本に滞在した。別府外国人観光客案内所でボランティアとして活動を始めたところ、リタイア世代の同僚たちから折々に聴く、戦中戦後の暮らしぶりに感銘を受けたという。両人の興味と熱意が、1930年代から50年代初めにかけて――戦争と占領時代の県内民間人の体験の聞き書きという、オーラルヒストリーの試みとして結実したのが本書である。
ただし、その成り立ちはきわめて複雑だ。インタビューは、アメリカと中国にルーツを持つ英語話者の夫妻が、通訳・翻訳者を介して質問し、日本語で答えてもらうという方式で行われた。英語による原著は2018年にアムステルダム大学出版から刊行され、同書を日本語に翻訳したのが本書ということになる。何重もの翻訳を経て、ひどく遠回りしているようだが、そのおかげで日本人の手になるものとは異なる視点が獲得されたといえるだろう。
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source : 文藝春秋 2023年2月号