★岡井隆
歌人の岡井隆(おかいたかし)は戦後の前衛短歌をリードして、若い歌人の活躍を促すとともに、歌会始の選者となって伝統との接続を自ら試みた。
1993(平成5)年、歌会始の選者となったとき、さまざまな批判が起こった。作風が前衛的で皇室に合わないとか、マルクス主義者だとかの指摘もあった。後に岡井は「50歳前後に思想転向して」、選者となったのはその結果だったと述べている。
28(昭和3)年、名古屋市に生まれる。父親は陶器製造会社の技術者。旧制八高(現・名古屋大)に在学しているころアララギ派に入会し、短歌をつくり始める。卒業して慶應義塾大学医学部に入り、北里研究所付属病院で内科医として治療にあたった。
〈この部屋のどこか燃えつつ今朝死せる肝(かん)のあかきを捧げて立てり〉
50年代、塚本邦雄や寺山修司とともに前衛短歌運動を起こして注目される。57年には吉本隆明と「定型論争」を繰り広げた。吉本は短歌が定型にこだわる限り衰退すると論じたのに対し、岡井は定型であることが求心力を保ち未来を拓くと反論した。
ところが70年、さかんに短歌を発表している最中、失踪してしまう。2年後、元歌人の医師が福岡県の療養所で働いていると報道される。
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source : 文藝春秋 2020年9月号