山崎正和、渡哲也、外山滋比古、弘田三枝子、山本寛斎

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偉大な業績を残し、世を去った5名の人生を振り返る追悼コラム

★山崎正和

 劇作家で評論家の山崎正和(やまざきまさかず)は、文化から政治までの広い分野で評論活動を続けた。

 1984(昭和59)年に刊行した『柔らかい個人主義の誕生』は、論壇を超えて多くの人に読まれる。豊かな消費生活を背景に、新しい個人主義が生まれつつあると説く同書は、マーケティングの参考書としても必読とされた。

 34年、京都市に生まれる。父親が満州医科大学教授に就任したため、奉天(現・瀋陽)で少年期を過ごした。終戦後、しばらく同地にとどまるが、父親は結核で死去し、内戦が続くなか、「米軍の飛行機の切符を買って脱出した」。

 帰国後、故郷である京都に落ち着くが、あてにしていた母の実家は没落していた。府立鴨沂(おうき)高校に入って間もなく、日本共産党の細胞を組織し運動に邁進する。「世の中を良くしたいという気持ちもあったけれど、自分の自我を持て余してのことでした」。

 京都大学文学部に入学してからは運動から遠ざかり、学費免除と奨学金を獲得し、家庭教師を何件も引き受け家計を支えた。大学院時代は美術史を専攻し、64年からフルブライト研究員としてエール大学に留学している。

 帰国後、書き始めていた戯曲に本格的に取り組み、63年、『世阿彌』を書き上げると、俳優座が千田是也主演で上演してくれた。舞台は足利時代の最盛期、将軍義満と世阿彌の葛藤を通して、政治と芸術の不協和を描き、岸田國士戯曲賞を受賞する。まだ、20歳代だった。

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source : 文藝春秋 2020年10月号

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