2つの恐怖
8月号の『東京五輪までに「ワクチン」はできない』で、本庶佑先生が新型コロナのワクチン開発の難しさを指摘されていた。
最近、私は次の2点においてコロナ禍の恐ろしさを思っている。
ひとつは「絶望感」だ。
私たちは、物事には終わりがあるものだと思っている。だから、緊急事態宣言が解除されたときには、漸くコロナ禍も終息の兆しが見えたか、と少し安心したのだった。
ところが7月になり、再び東京を中心に感染者数が急速に増え始めた。
最初は、人々の往来が増えたことによる必然と思っていた。しかし本庶先生は、ウイルスの遺伝子の変異により、仮にワクチンが完成しても一部のウイルスにしか効かなくなっていることもあり得ると指摘する。
一方で、ワクチンどころか治療薬の方も、アビガンの効果が十分には立証されず、全く楽観できる状況ではないことがわかってきた。コロナウイルスは、私たちが思っていたよりも遥かに厄介な代物だということが明らかになってきているのだ。
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source : 文藝春秋 2020年9月号