父と文藝春秋
先日、98歳の父が急逝しました。自転車に乗り、電子辞書で漢字パズルをし、毎月文藝春秋を読むのを楽しみにしていた父でした。読後私に下げ渡し、記事について話し合うのもまた楽しみのようでした。
亡くなる前日に買った3月号の213頁に栞が挟んでありました。お棺には別の新しい本を入れましたが、今になりようやく、遺された3月号に目を向けることができました。何に興味を持ったのだろうと父の目線で読むと「わたしのコロナ感染記」だったよう。コロナには強い関心を抱き、感染源はコウモリだとか中国医療従事者の手記の感想だとか、定期的に行くクリニックの待合室で熱く語っていたのを思い出します。
未読のようだったコロナ感染記、芥川賞受賞作、「李王家の縁談」に父は強い興味を覚えたことでしょう。伊都子妃や方子さんについては、同時代に生きた者としていろいろなエピソードを教えてくれました。
考えるパズルはいつも解いてありました。毎号、私が応募しました。
95歳の母と2人暮らしで、毎日の献立を考え、日常の諸事をこなした後の楽しみがこの文藝春秋だったのだと、改めて感無量です。父の最期に楽しみを与えてくれた文藝春秋に大感謝です。虫眼鏡でチェックをしながら読んでいた姿が彷彿とします。
ありがとうございました。
追記・私自身も3月号をやっと読むことができました。「『坂の上の雲』大講義」、「ミス・サンシャイン」、ニッポンの社長がよかったです。オヤジとおふくろは一番に読んでいます。(出射悦子)
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source : 文藝春秋 2021年5月号