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発想を変えよう

編集長ニュースレター vol.17

新谷 学 (株)文藝春秋 取締役 文藝春秋総局長
ニュース 社会 政治

 いつもご愛読いただき、ありがとうございます。

 いま発売中の4月号には、デジタルファーストの記事が4本あります。つまり、既に放送されている「文藝春秋電子版」のオンライン番組を基に作った記事ということです。

 4月号の発売日は3月10日ですが、本誌記事「シン・日本共産党批判」の基になる、松竹伸幸さんと斎藤幸平さんのオンライン番組「日本共産党はなぜアップデートできないのか」が放送されたのは、2月13日のことです。松竹さんが日本共産党を除名されたのが2月6日ですから、ちょうど1週間後にオンライン番組は放送されたわけです。

 これまでの「文藝春秋」だと、いくらとっておきのネタをつかんでも、翌月10日の雑誌発売日までは読者の皆さんにお届けすることができませんでした。それが電子版のお陰で、すぐに当事者にアクセスし、いち早くお伝えすることができるようになったのです。

 同じく4月号の「図書館への切なるお願い」は、直木賞作家である今村翔吾さんの下記のツイートがきっかけでできた記事です。

〈「今村先生の本、10冊入れましたよ!」と嬉々として話して下さる司書さんとかおられるんですが……これには「いや、貸本屋ちゃうねんから。苦笑」と内心で思っています〉

 このツイートの反響が大きかったことを受け、すぐに今村さんに取材を申し込み、オンライン番組「直木賞作家が『正直きつい!』 図書館への切なるお願い」に出演していただいたのが、121日です。再編集して誌面に掲載されたのはおよそ50日後のことでした。

 同様に、東浩紀さんと先崎彰容さんの対談「激論!戦争・正義・平和」も、高瀬隼子さん、李琴峰さん、宇佐見りんさんの鼎談「芥川賞と私たち」も、いずれも既に放送されているオンライン番組を基に編集したものです。

 いま、「文藝春秋」編集部では、「発想を変えよう」が合言葉になっています。紙の雑誌の締め切りにとらわれず、その時々に面白いテーマがあれば、すぐに動き、電子版に先に出す。オンライン番組のライブ配信では、その場で質問することもできますから、視聴者(読者)の皆さんが誌面作りに参加するケースも出てきます。

 また、オンライン番組を視聴いただいた後で、紙の雑誌で読むと、発言者(著者)や編集者がどこに力点をおいて加筆・修正しているかがよくわかります。

 今月は私も2本のオンライン番組に出演しました。新番組「編集長が聞く!」では、自民党政調会長の萩生田光一さんをお招きしたのですが、番組の途中で鈴木エイトさんからチャットで統一教会に関する質問が立て続けに寄せられる場面もありました。こうしたハプニング性も、「生で本音」をモットーとする私たちのオンライン番組の醍醐味だと思います。

 文藝春秋編集長 新谷学

source : 文藝春秋 電子版オリジナル

genre : ニュース 社会 政治