話題作は「262人、11年待ち」。文庫本まで借りられると、作家は正直しんどい……
今年1月、作家で書店経営者でもある今村翔吾さんが連続で発信したツイートが大きな反響を呼んだ。
図書館で、新刊やベストセラーを大量に貸し出すことについての問題意識を綴ったものだった。
「図書館に否定的な作家もいますが、私は寛容というと偉そうですが、基本的には気にしていません」「しかしたまに『今村先生の本、10冊入れましたよ!』と嬉々として話して下さる司書さんとかおられるんですが……これには『いや、貸本屋ちゃうねんから。苦笑』と内心で思っています。教育、文化などの観点からも 図書館に入るのはいいと思うんですけど、そこまでいけばもはや『住民サービス』ではないかなと」
続いて、こうも呟いている。
「我々、作家だけではなく、出版社にとっても厳しい状況を作っています」「図書館の性質上これは民間だけではどうしようもないかもしれません。国も含めて考えていくことだと思います」
話題作が何冊も所蔵(複本)され、無料で大量に貸し出されている現状が、書店での本の購買動機を奪っているのではないか——。まだまだ伝えたいことがあるという今村さんに真意を聞いた。
今村 これまでも考えてきたことをポロッと呟いただけだったので、予想外の反響に「おお〜」という感じでしたね。図書館で借りられるばかりになってしまうと、本が売れなくて作家としてはつらい。かといって、本を読みたくてもお小遣いを割けない子供たちなど、必ずしも皆が好きなように買える状況にあるわけではないのもまた事実です。「フルタイムで働いても単行本を買うのに躊躇するような給料なんです」とか、逆に「読みたい本は待てないので買っちゃう」など、いろいろな立場からリプライが寄せられましたし、僕自身、もともと関心があってかなり勉強しているテーマということもあり、ツイッターではとても呟き切れないなと思っていた矢先でした。文春さんから速攻で取材依頼が来たんよ(笑)。
——図書館に同じ本が何冊も所蔵される「複本」という状態の問題を指摘されましたね。
今村 芥川賞や直木賞受賞作などの話題作は特に顕著ですが、図書館で1冊に対する予約人数が膨れ上がることはままあります。つい最近は、僕の本が「262人待ちになっている」というツイートを見かけました。その図書館の貸出期間をもとに計算すると、いま予約して、順番が回ってくるのが11年後なんですよ……11年やで? 小学1年生で予約してくれた子が高3になる。いやいや、ホンマにみんな待ってくれる? と思ってしまって。
司書の方は、その長い待ち時間を解消するために「10冊入れましたよ!」と言ってくださるわけですが、複本にはいろいろ問題があって、実は作家もしんどいんですよ、ということを伝えたかったのです。
この問題については以前から、作家だけでなく出版社からも声が上がっていました。文春でもありましたよね?
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source : 文藝春秋 2023年4月号