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【イベントレポート】デジタル戦略“進化論” ~成功と失敗に学ぶ、試行錯誤の実践知~

  

 

 ◎カンファレンスレポートのポイント

 ★経団連DX会議タスクフォース座長 浦川 伸一氏の基調講演

 ★クオールホールディングス、JR東日本びゅうツーリズム&セールスのDX試行錯誤の実践知

 ★全社横断データ活用に不可欠なリーダーシップ像

■コンセプト

DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進することでいったい何を実現したいのか、そして何が実現できるのか。

デジタル活用による業務プロセスの効率化と並行し、全社一丸となってリソースを集中し、新たな価値を創造することが成長には不可欠となっている。DXの成果を最大限に引き出すために企業のリーダーがまず取り組むべきことは、目的を明確に示し、実現のためにどのような手段を取るべきか見極めてビジネスをデザインしていくことである。

日々テクノロジーが進化していく中、企業のリーダーは変えることと変えないこと、既存事業と新規事業の最適な融合、あるべき姿の実現に向け全社に変革の風を巻き起こす推進力、さらには変革の定着や行動変容の推進など、試行錯誤を繰り返しながら最適解を見つけるべく格闘している。

本カンファレンスでは、「デジタル変革“進化論”」をテーマに、ビジネスリーダーの皆様に登壇してもらい、DXを進めるうえでの失敗の経験と成功への実践知を共有することで2023年をDX推進の転換点にすることを意図した。


■基調講演

日本企業が抱える、DX推進の壁

~進化するデジタル変革の先にある新たな価値観、世界観の構想~

  

 

損害保険ジャパン株式会社 取締役 専務執行役

一般社団法人日本経済団体連合会 DX会議 タスクフォース座長

デジタルエコノミー推進委員会 企画部会長

浦川 伸一氏

1961年生まれ。立教大学社会学部卒業後、日本IBMを経て2013年に(株)損害保険ジャパン及び日本興亜損害保険株式会社CTO。14年損保ジャパン日本興亜システムズ(株)代表取締役社長、16年損害保険ジャパン日本興亜(株)取締役業務執行役員CIO、20年損害保険ジャパン(株)専務執行役員(現職)、21年SOMPOシステムズ(株)取締役会長(現職)、立教大学大学院人工知能研究科 客員教授(現職)。

COBOLベースの現行基幹システムの日本発のJavaEE7をベースとしたオープンシステムに刷新するなど、斬新なデザインを提唱し実現に導く。社内外での講演や、内閣府、経産省、経団連等のDX推進、AT活用に関する委員会にて積極的に活動する。

◎日本発 協創DX

機械化・デジタル化は、昔から人の仕事を確実に巻き取り(例=鉄道自動改札/国際空港出入国検査)、人とコンピューターの関係も時代とともに変遷してきた。

経団連は、DX会議・タスクフォースにおいて、2020年5月に提言「Digital Transformation(DX)~価値の協創で未来をひらく~」を公表。DXを「デジタル技術とデータの活用が進むことによって、社会・産業・生活のあり方が根本から革命的に変わること。また、その革新に向けて産業・組織・個人が大転換を図ること。」と定義づけた。

経団連が定義した「協創DX」5要素は、(1)協創 (2)経営 (3)人材 (4)組織 (5)技術。改革には多様な主体による「協創」を進める視点が重要であり、協創を軸に(2)~(5)を合わせた5分野での変革が必要、と定義した。

  

 

顧客を、企業目線である「消費者」ではなく「生活者」と捉え、考え抜くことはDXを進める上で重要な視点である。生活者にどのような行動変化や価値変化が生じていて、どのようなニーズがあるのかを探求し、生活者とどのような接点を見出すか=生活者目線での価値提供が、DXで成果を出せるかどうかのキーになる。

◎DX推進の壁?

経団連の提言から3年を経て、DXという言葉が一人歩きしていないか/協創にたどり着いたか/システム実装は進んだか、確認が必要だ。

経団連や経産省が定義するDXは“Transformation”が主軸。巷で使われる、業務改善・省力化/ペーパーレス化/AI技術の部分活用……といった意味合いとはやや異なる。Transformationを伴うデジタル新事業立ち上げ/ビジネスモデルの刷新まで到達しなければならない。ただ、DXを顧客体験のイノベーション、さらには社会・産業構造の大変革を伴うイノベーションと捉えると、ハードルは相当高い。Pre-DX(守りのDX)⇒DXの実践(攻めのDX)という、競争力強化へ向けた多段階DXが必要である。

2021/22年の経産省のDXレポートでは、デジタル産業のあるべき姿として“ネットワーク構造”になることを示唆している。各企業や組織が役割に応じて柔軟に提携してデジタル産業を築き上げていくモデルに変わっていく。

垂直統合(一企業が企画~フォローまでを一貫して担当し、下請けや販社などと連携し縦割りの産業を構築するビジネスモデル)⇒水平統合(機能別にサービス化され、相互にAPI接続され産業構造がDisrupt=崩壊・混乱する)、への変化である。ただし、技術標準が一定程度進まないと、水平統合の実装は容易ではない。

  

 

水平統合による産業のDisruptは進みつつある。既存産業は、自社製品・サービスのOEM化やホワイトレーベル化が進まないか/サブスクビジネスモデル化に組み込まれないか/極端な顧客単位の個別サービスが主軸にならないか……といった危機感を持つべきだ。早期に取り組まなければ、大変革=DXに飲み込まれる。

◎これからの協創DX

目指すべきDXの姿とは、(1)パーパス経営に則したDX (2)テクノロジー親和性に則したDX (3)人材ポートフォリオに則したDX であると考える。

論点(1)においては、目指すべき社会・企業の目標設定とDXの波の高さの設定を押さえなければならない。新規事業に大きくTransformするのか、既存事業をデジタル技術で洗練化し事業変革を目指すのかによって、必要人材像は変わる。例えばSOMPOでは、データ事業立ち上げに際し強力なパートナーとの協業を軸に組織を柔軟に変化させ、新事業の新境地を目指している。

  

 

論点(2)、テクノロジーの克服においては、AI技術の本格適用/クラウド技術の見極め/Web3等の先端技術の見極め、に集中的に対応しなければならない。論点(3)、人材活用においては、各企業の人材ポートフォリオに則したD&I(多様性・包摂性)/DXを牽引する人材像、を押さえるべき。先述の経団連のDX提言では、DXを推進するために必要な人材像を、ビジネスデザイン/事業家/先端テクノロジー/高度IT開発運用を担う“起承転結”人材と、それを束ねる“プロデューサー”人材と想定・提唱している。

◎まとめ

先端技術人材はひと握りでいい。その一方、大多数の社員はDXの本質を理解し実践でき、D&Iを自然に受容し実践できる人材へのシフトが求められる。次世代カルチャーにシフトしなければならない。「その話、聞いていない」「いい案だね、検討してみる」「次回会議に、オブザーブ参加して」「発言・指示の意図を汲み取って」はNGワードである。

 以下のことを再確認し、まとめとしたい。

 ・欧米発のDXに惑わされていないか
 ・企業別に必要となるDX施策は大きく異なるはず
 ・シンDXの論点:パーパス、テクノロジー、人材分布
 ・特に技術領域のキャッチアップには本腰を入れるべき
 ・起承転結+プロデューサー人材が一つのヒントに

 


■事例対談

データ活用で目指す全体最適

~薬局DXを目指すリーダーの挑戦~

  

 

クオールホールディングス株式会社

DX・AI推進室 統括主任

成田 剛 氏

平成22年9月にクオール(株)に入社。情報システム部に所属し、クオールカード会員システムを開発。ERP再構築など社内の基幹システム開発に参画。一昨年より社内のデータ統合基盤開発及びDomo新規開発の社内提案、システム開発リーダーを担当。令和3年4月よりクオールホールディングス(株)DX・AI推進室へ出向し、グループ全体のDX計画策定およびサービス開発に従事する。

 

ドーモ株式会社

リードコンサルタント

守安 孝多郎氏

日本のIT業界にて20年以上の経験があり、エンタープライズビジネスでプロフェッショナルサービスに従事している。ドーモにおいて、リードコンサルとして、クライアント企業のデジタルトランスフォーメーション推進のため、Domo導入支援、コーチング、コンサルタントを担当。ドーモ入社以前は、コンサルティングファームのシニアマネージャーとして情報システム部門のさまざまな改題解決に取り組んできた。

始めに、ドーモの守安氏より対談趣旨と、BI(Business Intelligence)ツール「Domo」の紹介があった。

データ活用は試行錯誤の繰り返し、成功と失敗の連続だ。データ活用を確実に遂行している企業や担当者の経験談からはさまざまな気づきが得られる。Domo活用歴が4年になるクオールの成田氏を招聘して、DXの成果を最大限に得るポイントを聞く。

Domoは2010年に米国ユタ州で創業。「経営者が経営者のために作ったBI」が原点であり、ビジネスにおけるデータの分析・活用を促進するためのBIツール=企業向けクラウドサービスを提供している。データ収集=接続⇒保存⇒変換⇒視覚化(可視化)⇒コラボレーション(情報共有)というデータ活用に必要な機能をワンプラットフォームで網羅しており、予測機能やアプリなどによる豊富な拡張機能を併せ持つ。

また、ドーモは手厚いコンサルティング/カスタマーサービスや、企業のデータ活用を失敗させない新たな役職「データアンバサダー」の育成・提供サービスも提供する。ビジネスに成果を出す/企業に変革を起こす/マインドチェンジを引き起こす、のがDomoである。

続いてクオールホールディングスの成田氏が、自社が取り組むDXについて事例を引きつつ詳しく紹介した。以下は発言の抄録。

「全国に調剤薬局を894店舗展開するクオール。社名はQuality Of Lifeに由来し『医療を通じて、患者さまの“生活の質”向上を願う想い』を表している。DXは、患者にとってのメリット追求/新しい薬局としての価値創出/薬局機能の構造的な転換、の3つを重要な軸として推進している」

「具体的には、自動化(業務効率化)/データ活用(状況把握・予測)/モバイル(即時性・機動力)がDXのメリットであり、これらを円滑に享受するための“人材”が何より大切だ。DXを推進・教育する側と利用する側双方において、楽しく便利に使えるといったDX利用マインドの醸成や環境整備が重要だと考え、Domoを活用している」

  

 

◎Domoによるデータ活用推進

「先ほどの守安氏の説明にあったDomoの仕組みの中でも「変換」「視覚化」のユーザビリティの高さは、データ加工・処理・活用の属人化を防ぐ最適解として高く評価している。データ接続・加工、計算式の埋め込み、データ関連図の確認、ダッシュボードの作成……、といった全ての作業がクラウド上で一元管理・フロントエンドで操作でき、ブラックボックス化を防ぐ。

「データ加工や関連図の確認も簡単。例えばETL=帳票作成においては子画面や設定項目が少なく見やすいし、データ相関図がリアルタイムで自動作成されるために事前調査が容易だ。従来のエクセル帳票を見た目はほぼ同じに設定したDomoに置き換えた結果、データが“市民権”を得た。さらに見たい・見せたい数字を絞った効果的な見せ方ができるようになり、データの鮮度/意味/意図が正しく伝わるようになった。モバイル端末でも見られるようになったのも大きな利点」

「薬局・薬剤師の評価は、薬を正しく渡す“対物業務”から、薬を飲んだ後までフォローする“対人業務”へと重要性がシフトしている。処方箋をあらかじめ薬局に送り投薬の待ち時間を短縮するために、また服薬サポートのために、LINEを活用したサービス(事業)を導入している。今後は、来店が不要になりビデオ通話後に薬が自宅に届くようになるだろう」

「LINE事業の進捗度合いデータ含めたDomoを使用した帳票の閲覧頻度や活用度は、導入後に無施策だと右肩下がりになる。また、業務の優先順位や諸事情が各薬局や地域ごとにそれぞれあり、データだけを整えて提示したところで、全ての店舗がすぐにそのデータを参照し改善に動くわけでもない。押しつけは厳禁であり、各店舗のモチベーションを高めるためにデータの提示方法には配慮している。Domoを利用しつつ、データの収集、計算、集計に時間をかけない/データセットの正しさを担保する/多くの人に使ってもらう/データはメリハリをつけて確認、の4つに意を注いでいる」

役員には手作業をさせない、時間を使わせないことが大事。毎日、DomoのETLで自動集計し、前日までの売上データと前年同日売上から未来日の売上予測と予算比を計算。さらに、予測値は店舗ごとに計算する。全社から店舗まで迅速な確認が可能になっている」

DXは一歩一歩着実に。汗と泥にまみれて/効果が見えれば一緒に楽しめる仲間も増える/新しい体験を作って浸透させる欲求を継続させる──以上をリーダーは意識すべきだ。『DXとはモノをつくることにあらず、ヒトをつくることにあり』である」


■事例講演

身近なデータから業務最適化へ

~可視化の先の新しい日常~

  

 

 株式会社JR東日本びゅうツーリズム&セールス

 ダイナミックレールパック本部

 成田 義浩氏

大学卒業後、ツアーコンダクターを経て2011年入社。ツアコン時代の経験を活かして団体旅行の企画・管理に携わる。その後、個人型旅行の部署へ転属。同時に立ち上がったWeb販売特化のブランド「JR東日本ダイナミックレールパック」を担当。現在はWeb販売システム開発プロジェクトの傍ら、生成されたデータをアクションに繋ぐべく、業務効率化や収益化などを行っている。

観光産業、旅行業は他産業に比べて、DXの取り組みが遅れている(観光庁『令和4年版観光白書』より)。「長年の慣習や風土を変えることへのアレルギー体質がある、しかし明確な顧客の購買行動の変化があり、店舗数の見直し×オンライン販売の強化と、DXは喫緊の課題」と成田氏は冒頭述べ、DXによる業務最適化の詳細紹介に入った。

2022年4月には社名を『JR東日本びゅうツーリズム&セールス』に改称した。その前月には個人向けの基幹商品の名称を『JR東日本びゅうダイナミックレールパック』に改め、店舗販売を止めてオンライン専売化した。基幹システムもリプレイスし、データ活用できるデザイン・設計とすることで、実業務でのデータ活用推進を加速している。

従来は、『データ(数字)』を見て意志決定を行う業務は、幹部・経営陣のみであった。日常的に一般社員が数字を必要とする場面がほとんどない環境にあった。15年にオンラインで商品販売を開始して以来、販売実績以外のサイト計測によるデータの生成が進み、実績データ以外のデータ(会員情報やSNS投稿内容など)が蓄積されてきた。

Web解析データと販売実績データの分析によるマーケティングを目的として、2018年には『Domo』を導入。その決め手は、直感的な操作性/わかりやすい視認性/豊富なコネクタ/容易なデータ統合、であった。この『システム(ツール)』導入により膨大な作業が自動化され、多くの社員がデータと向き合う環境が構築可能となった。

データの可視化をして把握したいKPIは何か。“現在”のデータを視る必要性は、本質的には“現在”を把握することで起こす“行動”があること、アクションすることが前提である。ここで大事になってくるのが『人』だ。十分なデータとデータを扱えるシステムがあっても、各データを目的を持って扱い、指標の策定や意識の変革が行える人がいなければ宝の持ち腐れになってしまう。

KPIは月次での目標販売額であったが、例えば5月中旬にその時点の実績データを5月末の目標と見比べてもそこからの対応や評価は難しい。『その指標は、何をするため?』を常に意識し、KPIを見直した。具体的には、目指すデータ活用の頻度に既存のKPIの粒度を一致させ、データをどのように視るか、視る側の意識を揃えた。現状に対する共通認識化を徹底した。

先述の基幹システムのリプレイスにより、従来は“存在するデータを活用”するだけだったのが“必要なデータをつくる”ことができるようになった。活用することを前提としたデータ構築である。システム内で発生した全てのデータを連携/履歴データの作成/データの更新頻度に合わせて毎分、毎時、毎日のデータ連携を実現、の3つが可能になった。これにより『全国旅行支援事業』対応でも、ほぼリアルタイムのデータ取得・処理により適切な予算管理ができている。

  

 

日常業務の中にもデータ活用の機会は潜在している。例えば、期日までの改修状況の進捗率を数値化⇒遅延見込みなら未回収箇所へ早期対応/入力内容のチェックで不一致データを検知⇒不一致箇所の修正、といった行動をすぐに取る。“収益化へのアクション”という目標を中心に定め、自動化・データ化・最新化により最適化された業務風景を描くべきだ。現状を当たり前と思わない思考/データに置き換える思考/目的と手段を区別する思考、と地道な成功体験により、身近な業務から変革を進めたい。

データ活用は定着し、もうデータのない日常には戻れない。データが新たな価値を生み出す日常は間近だ。目指す今後の日常は、

・データ=自社以外のデータ取り込みによる指標精度の向上
・システム=業務進捗の完全視える化による業務課題の解決
・人=アクションプランの最適化 アクション起点でのデータ活用の定着化

である。DX推進とは人・データ・システムの3つが重なる領域を広げていくことである。身近なデータから業務を最適化し、データ活用の社内文化を作りながら新しい価値を生み出していきたい。


■実践講演

ビジネスを加速させるデータとDXリーダーシップ

~全社横断でのデータ活用でスピーディな意思決定を実現する~

  

 

 ドーモ株式会社

 プレジデント ジャパンカントリーマネージャー

 川崎 友和氏

日本のIT業界にて20年以上の経験があり、主にデータ活用を通じて日本企業の成長を支援。2012年ドーモに入社し、16年にジャパンカントリーマネージャーに就任、その後Elasticにて2年間の経験を経て、21年6月より現職。データ業界での長い経験を活かし、日本企業のデジタル変革の成功に尽力している。

全社レベルでのデータ民主化実現企業が急激に増加。デジタル技術の導入だけでDXに取り組み、失敗を繰り返した企業が大規模人材育成に舵を切った──この2つが、昨年1年間で強く感じた変化である。

日本企業がDXに失敗するのは、最新のテクノロジーを導入しても、企業自体のトランスフォーメーションができていないから。DはやっているがXをしない、経営層のデジタルスキルが低い、ICT/Sler(システムインテグレーター)への丸投げ体質、TCO(トータル・コスト・オブ・オーナーシップ)削減投資からROI投資に移行できていない……。これらをどう解決するかが今後のチャレンジだ。

経済産業省政策局・商務情報政策局作成の『デジタル社会の実現について』という資料から引く。「『日米のデジタル投資額とGDPの推移』。デジタル投資額とGDPの動きはほぼ連動している。国全体のデジタル投資の遅れが“失われた30年”の大きな要因。成長のカギは、産業全体での幅広いデジタル投資の活性化」。

国のデジタル投資が一向に増えない現状においては、日本企業が競争性を持ち続けていくことは今後も難しいだろう。先述した、ROI投資、攻めのDX投資を今後どうするのかは日本企業にとって非常に重要なポイントだ。

また、経営者・事業部門・IT部門の協調にも大きな課題がある。それが「十分にできている」との回答は米国の約7分の1だ(出典:情報処理推進機構 DX白書2021)。DX投資が少なく、一人あたりGDPも世界20位台に沈んでしまった日本の企業は、企業内のDX推進連携が取れていないのである。

Domoが目指す世界は「全社的なデータの民主化を実現し、オープン&リアルタイムにデータを見て迅速なアクションを取るため社員に権限以上がなされており、また結果指標だけでなく先行指標を元に施策を打てる組織体制」である。全体最適、チェンジマネジメントの実現。そのためには、経営層の強い牽引、リーダーシップが不可欠である。データを全社員に共有した際の成功体験、というのは確実にある。社員の好奇心、モチベーションを経営層は喚起しなければならない。

組織体制は、標準化や統率が容易な中央集中型から、柔軟性や自律性が高くスピーディに物事に対応できる「ハブ&スポーク型」への移行がトレンドになっている。また、経営者/IT部門/事業部門・ビジネスリーダーの間を取り持ち橋渡しを行い、企業のデータ活用を失敗させない新たな役職「データアンバサダー」の設置も提唱したい。技術系のデータサイエンティストとは異なるデータアンバサダーは、ビジネス課題を熟知し、DXの推進やデータドリブンなどビジネス環境の構築、データ活用に向けた企業文化の醸成を担当する重要な役割を担う。

  

 

データ整備から始め、その後BIツールを導入し、データの可視化実現まで物事をじっくり進めてきた日本企業は苦手かもしれないが、発想を転換してスピード重視の「アジャイル開発」も提案したい。BIを最初に導入してデータの可視化から始め⇒LoB(企業の業務遂行上の基幹アプリケーション)評価⇒既存データの整備、と進める。Domoが持つ機能群はワンプラットフォームでこれを実現する。2年間かかる開発が2カ月で実現する可能性もある。

データ活用でビジネスを加速するために必要なことを、再掲を含めまとめとして提示する。

・DX=組織ごとトランスフォーメーション
・経営層のリーダーシップ
・まずは可視化からアジャイル開発
・全社展開のグランドデザイン
・スピード、スピード、スピード
・ビジネス部門、IT部門、経営層の橋渡しポジションの設置

いつでも どこでも 誰でも どのデバイスでもビジネスの「今」を知る。データの民主化で全体最適を実現するDomoでビジネスを支援する機会を頂ければ幸いだ。

 2023年1月20日(金) オンラインにて開催・配信

source : 文藝春秋 メディア事業局