平野「ノーベル賞にふさわしい戦後最高の作家」
尾崎「サービス精神旺盛で気っ風のいい人」
尾崎 3月3日に大江健三郎さんが亡くなりました。大江文学の本格的な評価はこれからで、「100年価値が残る」作家になるのではないかと考えています。
平野さんと大江さんといえば、1999年に『日蝕』で芥川賞を受賞してデビューされた時、大江さんから平野さんへの伝言を頼まれて、私がお伝えしましたね。
平野 ええ。「30歳までは自分の書きたいことしか書いてはいけない。それが出来れば、あとはもう大丈夫だから」といった内容のメッセージでした。とても勇気づけられたのを覚えています。
尾崎 大江さんは、1957年、東京大学在学中の22歳でデビューし、翌年芥川賞を受賞します。同じように京都大学在学中に23歳でデビューした平野さんに、強いシンパシーを感じていらしたんだと思います。
平野 そういう経緯だったので、デビュー時に大江さんのお名前も随分と引き合いに出されましたから。
尾崎 平野さんは、2012年にパリで開かれた書籍展「サロン・デュ・リーブル」に、大江さんと一緒に参加されましたね。私も取材で同行していました。
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source : 文藝春秋 2023年5月号