ドラマ「肝っ玉かあさん」(TBS系)で人気を博し、“お母さん女優”としてドラマ、舞台、CMで活躍した京塚昌子(1930〜1994)。娘役を演じた沢田雅美氏が「京塚のかあさん」を語る。
昭和43(1968)年にはじまった「肝っ玉かあさん」は、視聴率30%のヒット作品になりました。
京塚さんは当時38歳。19歳の私から見たら大ベテランでしたが、役柄の大正五三子(いさこ)そのままの朗らかで優しい方でした。
同作の舞台版では、初舞台の私を気づかって楽屋を一緒にしてくれました。年齢や格の違う役者を同室にするなど普通はないことで、芝居の世界では「抱く」といいます。京塚さんはプロデューサーの石井ふく子さんに「あの子、抱くわよ」と言ってくれたのです。楽屋でも私のことを役名の「三三子(みみこ)」と呼び、私も「かあさん」と呼んでいました。
かあさんは、馬主になるほどの競馬好きでした。「三三子の馬券も買ってあげる」と言って、よく自分は五三子の五-三、私には三三子の三-三を買ってくれましたが、当たったためしはありません。
地方公演では、晩ごはんのお伴もしました。ウイスキーのボトルを3本空けた酒豪伝説をもつ方ですが、酔っ払うことはなく、ちょっと陽気になるぐらい。一度、相撲甚句を歌ってくれたことがありました。東京・根津の下町育ちで、若い頃からいろいろ芸を身につけてこられたんだなと、聴き惚れたものです。
昭和58(1983)年、かあさんは脳梗塞で倒れました。慶応病院のリハビリ室に見舞いに行くと、かあさんは私を見つけるとすぐ、多点杖(たてんづえ)をついて近づいてきた。「リハビリは?」と尋ねると、「いいの、いいの」と笑っていました。
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