山口百恵(1959〜)は「いい日旅立ち」(昭和53年)でミリオンセラーを達成し、女優としても『風立ちぬ』(昭和51年)など多くの映画に出演。人気絶頂の昭和55(1980)年に引退し世間を驚かせた。写真家の立木義浩氏が、山口の被写体としての“凄み”を語る。
百恵ちゃんとは不思議な縁がある。最初は彼女が14歳でデビューしたとき。プロデューサーの酒井政利さんから頼まれて、レコードのジャケット写真を撮った。ぱっと見は普通の中学生。正直、強い印象は持たなかった。でも、酒井さんは「陰があるところがいい」と言っていた。たぶん彼女の奥にある資質を見抜いていたのだろう。
昭和49(1974)年に「ひと夏の経験」が大ヒット。少女が過激でセクシーな歌をうたう“青い性”路線で、百恵ちゃんはスターの座へ駆け上がった。まわりの大人が仕掛けた戦略が見事にはまったわけだが、それだけじゃ、あれほどのブームは起きない。
なぜ山口百恵は日本中を虜にしたのか? 僕がその理由に気づいたのは、彼女が引退する直前に出した自叙伝『蒼い時』を読んだときだった。
本の仕掛け人は、編集者でプロデューサーの残間里江子さん。彼女とは以前から何度か仕事をしていた。あるとき残間さんから電話がかかってきて、「今から事務所に行っていい?」と訊かれた。百恵ちゃんが原稿を書く場所を探しているという。
ほどなくして二人が現れた。百恵ちゃんは白いジャケットを着ていた。僕は空きスペースに机とライトを置き、ちょっとした書斎を用意した。「何か飲みますか?」と訊いたら、「ミルク」というので、隣のコンビニに買いに行った。
残間さんから、「立木さん、写真もお願いね」と言われて、執筆風景を撮影した。ヘアメイクもスタイリストもなし。作家が原稿用紙に向かう生身の姿を撮らせてもらった。執筆の邪魔をしないように、最初に何枚か撮ったあと、僕らは部屋を出た。数時間集中して原稿を書いた後、百恵ちゃんは事務所を後にした。
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