大江健三郎、扇千景、大川隆法、陳建一、伊藤雅俊

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偉大な業績を残し、世を去った5名の人生を振り返る追悼コラム

★大江健三郎

大江健三郎 ©時事通信社

 作家・大江健三郎(おおえけんざぶろう)は、若くして芥川賞を受賞し、戦後文学の開拓者として称賛され、批判の標的ともなった。

 1994(平成6)年、スウェーデン・アカデミーによるノーベル文学賞授与が明らかになると、東京の成城にある自宅の前で待機していた記者から歓声があがった。「日本の現代作家たちが積み上げてきた仕事のお陰で、生きている私が受賞したのです」。

 35(昭和10)年、愛媛県の山村に生まれる。7人きょうだいの5番目で家業はミツマタの加工だった。子供の頃『ハックルベリィ・フィンの冒険』に夢中になる。当時、友達に野球ボールの投げ方が変だといわれ、野球雑誌を読んで訂正したが「ますますおかしくなった」という。

 地元の高校に入るが、いじめに遭って松山東高校に転校した。ここで後に映画監督となる伊丹十三と出会い、彼の影響で小説や歴史書を読むようになる。なかでも渡辺一夫の『フランスルネサンス断章』に感動し、渡辺のいる東大仏文科に入ろうと思った。

 1年浪人して東大に進むが、「自分は学者には向いていない」と気づく。いっぽうで「すでに、本気で小説を書き始めていた」。57年に東大新聞に掲載された「奇妙な仕事」が平野謙に絶賛され、翌年「飼育」で芥川賞を受賞してマスコミに追い回される。

 60年には「安保批判の会」に加わりデモに参加しながら、作品を次々発表した。浅沼稲次郎刺殺事件に触発されて書いた「セヴンティーン」と「政治少年死す」が右翼の攻撃対象となる経験もした。

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source : 文藝春秋 2023年5月号

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