日本を鼓舞したダルビッシュの言葉学

鷲田 康 ジャーナリスト
エンタメ スポーツ

「国を背負うのは凄く特別なもの」。最年長エースが語った日の丸への思い

「国を背負うのは凄く特別なものだったと思います」

 日本が3大会ぶりに世界一を奪回した第5回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)。前回優勝のアメリカ相手の決勝戦で日本代表は、先発の今永昇太投手から7人の投手で繋ぎ、3対2で逃げ切った。試合終盤には、ダルビッシュ有投手から大谷翔平投手にバトンがわたる豪華な“メジャーリーガー継投”も実現した。

「とにかく同点に追いつかれて(大谷にバトンを)渡すのだけは嫌だったので、勝った状態で渡したかった。それだけを考えてマウンドに上がりました」

試合後の会見で記者の質問に答える ©時事通信社

 3対1と2点リードの8回にマウンドに上がったダルビッシュは、1死からカイル・シュワーバー外野手の一発を浴びて1点差に。さらに続くトレイ・ターナー内野手にも中前安打されて同点のピンチを招いたが、何とか後続を断ち切った。

 WBC日本代表が本格的に始動したのは2月17日からの宮崎キャンプだ。ここから3月22日の決勝戦まで日本代表の精神的支柱となり、チームを1つにまとめ上げたのは、最年長のダルビッシュである。大谷や吉田正尚外野手らが所属チームで調整するなか、メジャー組でただ1人、宮崎キャンプに参加した。年齢だけでなく日米での実績、経験は精鋭ぞろいの代表チームでも抜きん出た存在であり、宮崎に集まった段階から他の選手は畏敬の視線を送っていた。

「結構、警戒されていると思うので、ちょっとあまりまだ話していない選手もいる」

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source : 文藝春秋 2023年5月号

genre : エンタメ スポーツ