あのとき、「最悪のシナリオ」に向かっていたら、その後の日本の歴史はどうなっていただろうか。
そう考えただけで身の毛がよだつ思いがする。東京電力福島第一原発事故による放射能汚染が東京まで広がった場合、日本は、東日本を失い、この国は、東と西に分断されていただろう。
実際のところ、菅直人首相は、そのような恐怖感に駆られ、3月22日、近藤駿介原子力委員長に極秘に「最悪のシナリオ」の作成を求めた。
そのシナリオは、燃料プールがすべて損壊し、コアコンクリート相互作用が起こった場合、170キロ圏内の住民は強制避難、250キロ内の住民は自主避難の必要がそれぞれ出てくると予測していた。
近藤委員長は、菅首相からその話を持ちかけられた時、「最悪のシナリオということで言えば、いまが最悪です」と答えている。
近藤委員長は、「いまが最悪です」と言い切ることで、これから展望が開ける可能性を示唆し、首相を鼓舞したのである。
危機対応の際の最大の敵は、悲観主義、さらには敗北主義である。
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source : 文藝春秋 2013年4月号