90年代からの長い「失われた時代」で日本が失ったものは多いが、その一つに日本のロシア外交がある。
かねがね、そう考えていたが、最近、欧州屈指のアジア通のベテラン外交官と食事をして、その感を強めた。
彼は日本語と中国語をともによくし、日本に駐在する前、中国に勤務した経験を持つ。彼は言った。
「北京滞在の時、ロシアの外交官と親しくし、よく食事をともにした。彼はマオタイを飲むとホンネを漏らしたものだ。『本当のところ、ロシアは日本のようなパートナーを求めているんだ。しかし、領土問題のせいで、それがなかなかかなわない。日本がベストなのにセカンド・ベストを選択せざるを得ない』ってね」
セカンド・ベスト、つまり、中国のことである。
ロシアもまた対中リバランシング外交を模索しているということなのだろう。
何も驚くに当たらない。
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source : 文藝春秋 2013年3月号