消極的権限争い

新世界地政学 第35回

ニュース 社会 政治 経済 国際 歴史

 太平洋戦争は、不可避だったのではない。それは避けることができた。しかし、それを阻んだ大きな要因の一つが、当時の日本の官僚組織、すなわち官邸、海軍、陸軍、宮内省などの「消極的権限争い」だった。

「消極的権限争い」とは、政治的に得点にならないこと、役所の権限にプラスにならないこと、面倒な仕事を押しつけられることについては、手を挙げない、飛び出さない、目立たないようにする霞が関処世術である。

 とりわけ国家的危機のような事態では、決断すること自体が組織防衛上の大きなリスクになる。そのようなとき、日本の官僚組織は、組織としての「非決定」を決め込む組織文化を宿している。そして、そのことが国家的危機を「ジリ貧からドカ貧」に深化させるのではないか。

 私は福島原発事故を取材する中で、そうした疑問を抱いた。

 原発が炉心溶融しているのに、日本政府が緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)を住民避難のために使わなかった。これを所管している文部科学省は、それを使った場合、住民の間にパニックを引き起こすリスクに怖気づき、危機のさなかにそのシステムの運営とその結果の評価を原子力安全委員会に押し付けようとした。

 この国の官僚組織は、国の一大事の時、自分の組織を守ることを最優先させる。国民の人命も国益も二の次なのだ。

 私の日本の組織文化に対する疑念は、エリ・ホッタの“Japan 1941 Countdown to Infamy”(Alfred A.Knopf, 2013)を読んで、確信に近くなった。

有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。

記事もオンライン番組もすべて見放題
新規登録は「月あたり450円」から

  • 1カ月プラン

    新規登録は50%オフ

    初月1,200

    600円 / 月(税込)

    ※2カ月目以降は通常価格1,200円(税込)で自動更新となります。

  • 6カ月プラン

    新規登録は50%オフ

    月あたり1,000

    500円 / 月(税込)

    初回特別価格3,000円 / 6カ月(税込)

    ※6カ月分一括のお支払いとなります。7カ月目以降は通常価格6,000円(税込)で自動更新となります。

  • こちらもオススメ

    1年プラン

    新規登録は50%オフ

    月あたり900

    450円 / 月(税込)

    初回特別価格5,400円 / 年(税込)

    ※1年分一括のお支払いとなります。2年目以降は通常価格10,800円(税込)で自動更新となります。

    特典付き
  • 雑誌セットプラン

    申込み月の発売号から
    12冊を宅配

    月あたり

    1,000円 / 月(税込)

    12,000円 / 年(税込)

    ※1年分一括のお支払いとなります
    雑誌配送に関する注意事項

    特典付き 雑誌『文藝春秋』の書影

有料会員になると…

日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事、全オンライン番組が見放題!

  • 最新記事が発売前に読める
  • 毎月10本配信のオンライン番組が視聴可能
  • 編集長による記事解説ニュースレターを配信
  • 過去10年6,000本以上の記事アーカイブが読み放題
  • 電子版オリジナル記事が読める
有料会員についてもっと詳しく見る

source : 文藝春秋 2014年7月号

genre : ニュース 社会 政治 経済 国際 歴史