現実的な考え方をする人がまちがうのは、相手も現実的に考えるだろうからバカなまねはしないにちがいない、と思ったときである、と言ったのは、ルネサンス時代の政治思想家のマキアヴェッリであった。
今日(六月二十四日)、前日に行われた英国での国民投票の結果を知って、ヨーロッパ中が、いや日本の株式市場も大暴落したから世界中が、この一句をかみしめているのではないかと想像する。
イギリスは、国民投票の結果、ヨーロッパ連合から脱退すると決めた。
脱退しようものならサッチャーが政権をにぎる以前にもどってしまうのだ、と考える人々に対して、不安、怒り、嫉妬、そしてこれらが合わさっての異分子排斥、の想いのほうが多数を占めたからである。
経済的には、当のイギリスを除けば、いずれは「ゆれ」はもどるだろう。だが、政治的な影響はとてつもなく大きい。
まず、英国内で動揺が起る。スコットランドが前回の住民投票のときに英国内に留まると決めた理由の一つは、イングランドがEU内にいたからだ。もしも再度スコットランドで、英国からの独立を問う住民投票が行われたら、今度は独立派が多数になる可能性のほうが大。ウェールズはどうするのか。EU残留派が多数であった北アイルランド人も英国を捨て、EUの一国であるアイルランドと合併すると考えないだろうか。
そうすればイングランドしか残らなくなり、「グレート・ブリテン」どころではなくなってしまうのである。
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source : 文藝春秋 2016年8月号