ユーラシアという広大な後背地

新世界地政学 第63回

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「会場においでのロシア経営者の皆さま。皆さまが渡ってこられた橋の建設には、日本の杭打ち機が使われました。この会場の電気は、日本製ガスタービンが作り出しています。皆さま一刻も早く、日本企業と働く経験を積み重ねてください」

「プーチン大統領、目指しておられる製造業大国へ至る道には、実証済みの近道がある。日本企業と組むことだと、声を大にして申し上げます」

 安倍晋三首相は、先月初めロシアのウラジオストクで行われたロシア政府主催の東方経済フォーラムでの演説で、並み居るロシアの政財界トップを前にそのように訴えた。

「太平洋は、今、自由で、公正で、開かれた経済圏へと、進化を遂げようとしています。ユーラシアという広大な後背地は、そのダイナミズムに、さらなる弾みを与えることでありましょう。ウラジオストクの輝きは、太平洋の隅々までを照らす、巨大な相乗効果を生み出すと確信しています」

 そのような相乗効果が生まれるかどうかのカギは「双方をwin-winにする」エネルギー資源の開発と生産である、と首相は強調した。

 冷戦時代も冷戦後も険しかった両国の歴史の中でも、双方ともエネルギー共同開発は一貫して追求してきた。その成果であるサハリンⅠとサハリンⅡからの石油とガス(LNG)の供給の重要性は、中東混乱の長期化に加え南シナ海の中国の支配力の強まり、さらにはTPP崩壊の場合の米国からのLNG供給の不確実性によって益々高まっていくだろう。

 ただ、今回の安倍構想は、対ロシア協力の照準を極東だけでなく「ユーラシアという広大な後背地」へと広角レンズで捉えたところに特徴がある。おそらくその視野ははるか北方の北極海に向けられているのだろう。

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source : 文藝春秋 2016年11月号

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