「渡邉さんはOKか」──会社に絶望し、辞めようと思った
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ノリキヨさんが死んだ。81歳だった。
報せてくれたのは、警察庁時代の部下だった元内閣審議官の南隆である。その律儀な文章を読んで、胸が熱くなった。
〈林則清(はやしのりきよ)さんは去る五月二十五日に死去されました。最近十年間、外部との接触を断ち自宅で寝たきり状態にありまして、小生が電話で唯一会話の相手となっていたのが実情です。十九日に長電話をしたのが最後となりました。この間、折に触れ、林さんが清武さんの思い出をお話しされていたこともあり、供養の気持ちで、一言ご連絡させていただきました〉
人に終わりがあることはよく知っている。成長するいのちがあるように、夕暮れを急ぐいのちもある。私も70歳を超え、とりわけ今年1月にガン、コロナ、失明の三重苦を背負った郷里の末弟を喪ってからは、人の死も淡々と受け止めて生きたいものだ、と思っていたのだが、林の訃報は鋭く心を刺した。振り払っても振り払っても、つきまとう哀しみがある。
駆け出し記者だった私の前に立ちはだかった最初の難敵であり、読売グループと決別した私の生き方を理解してくれた人だった。
彼は警視庁の副総監や警察庁刑事局長を務め、国松孝次警察庁長官狙撃事件の捜査指揮官として語られることも多かった。だが、私にとっての「ノリキヨさん」は、40代半ばの磊落な警視庁捜査二課長であり、その巨大な頭だった。
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source : 文藝春秋 2023年8月号