「次なる交渉のモノサシにしてほしい」

初公開 北朝鮮首脳と「全7時間」極秘会談〈2013年訪朝〉

飯島 勲 内閣官房参与
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岸田総理が覚悟を決めた今、拉致問題解決を北に訴えるべきだ

 この記録は、墓場まで持っていくと決めていたものです。今回はそれを引っ張り出してきました。

 2013年5月、私は北朝鮮を訪問し、金正恩(キムジョンウン)国防委員会第一委員長に次ぐナンバー2の金永南(キムヨンナム)最高人民会議常任委員会委員長ら党・政府の最高幹部と会談しました。4日間の日程を終えて帰国した直後、メモを元にして、その様子を克明に綴ったのが「会談記録」です。当時から、メディアは挙(こぞ)って訪朝の内幕を報じましたが、実際に何が話し合われたのか、揣摩臆測の域を出ない、いい加減なものが多かった。いちいち反論しても仕方がないと考え、この10年間は、「見ざる、聞かざる、言わざる」を貫いてきたのです。

 ところが今年5月27日、その考えを改める出来事が起こりました。岸田文雄総理が拉致被害者の救出を求める「国民大集会」に出席。横田めぐみさんの母・早紀江さんらを前に、日朝首脳会談の早期実現に向けて、こう決意を述べたのです。

「条件を付けずにいつでも金正恩氏と直接向き合う」、「私直轄のハイレベルで協議を行っていきたい」

 率直に言って、ビックリしました。これは総理大臣として勝負をかけたとしか思えない発言です。7月5日にも官邸で曽我ひとみさんと面会し、再度「直轄のハイレベル協議」に向けた決意を述べています。総理直轄となれば、外務省だけでなく、官邸主導で、これまで人道支援の名目で北朝鮮とのパイプ役を担ってきた日本赤十字社や、事実上の大使館と位置付けられる朝鮮総連本部など、使える交渉ルートは全て使うことを意味します。

曽我ひとみさんと面会した岸田首相 ©時事通信社

 岸田政権が発足した直後、嶋田隆秘書官から、「拉致問題の状況を見ておいて欲しい」と一般論で言われたことはありますが、内閣官房参与として正式に対北交渉を任されたわけではありません。ただ、「直轄」という言葉に、何としても拉致を解決するという岸田総理の覚悟を感じ、喜寿を迎えた老人の血が騒ぎ出しました。

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source : 文藝春秋 2023年10月号

genre : ニュース 社会 政治 韓国・北朝鮮