市川猿翁、福原義春、亀井俊介、西村朗、イアン・ウィルムット

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偉大な業績を残し、世を去った5名の人生を振り返る追悼コラム

★市川猿翁

市川猿翁 ©共同通信社

 歌舞伎役者の二代目市川猿翁(いちかわえんおう、本名・喜熨斗〔きのし〕政彦)は、創造的な歌舞伎を目指して挑戦を続けた。

 三代目市川猿之助だった1986(昭和61)年、早替わり、大立回り、そして宙乗りと、スペクタクルな演出の『ヤマトタケル』を上演して話題となる。構想に5年、総製作費10億円のこの作品を見て、伝統的な歌舞伎にも興味をもった人は多かった。

 39年、東京に生まれる。父は三代目市川段四郎、祖父が二代目猿之助。7歳のとき三代目市川團子として初舞台を踏むが、少しも臆することなく舞台の中央に進み出たので、二代目猿之助が「この子はいい役者になる」と目を細めたという。その祖父の勧めもあって、慶応義塾大学文学部に入り卒業する。

 63年、三代目猿之助の襲名披露を行うが、祖父も父も病床から駆けつけて口上は涙まじりだった。猿翁となった祖父が同年6月に亡くなり、11月には父も死去して「梨園の孤児」と言われる。

 しかし、次々と新しい試みに挑戦し、68年の『義経千本桜』では宙乗りを披露して観客を驚かす。以降「けれん」と言われる派手な演出を続けたので、本名の喜熨斗を当時人気の「木下サーカス」にかけて「きのしサーカス」と揶揄された。その一方で喝采する者も多く、けれんが猿之助の代名詞となる。

 けれんの追求は、86年の『ヤマトタケル』で「スーパー歌舞伎」へと発展する。このとき脚本を担当したのは哲学者の梅原猛だった。大胆な仮説を立てる梅原は「学界の猿之助」と呼ばれたこともあり、2人は馬が合ったのだろうとの評もあった。

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source : 文藝春秋 2023年11月号

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