森村誠一、無着成恭、奥村彪生、土肥孝治、飯守泰次郎

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偉大な業績を残し、世を去った5名の人生を振り返る追悼コラム

★森村誠一

森村誠一 ©共同通信社

 作家の森村誠一(もりむらせいいち)はホテルのミステリーで注目され、社会派推理作家として活躍した。

 1974(昭和49)年、角川書店(現・KADOKAWA)の編集局長だった角川春樹に「あなたの作家の証明書になる作品を」と頼まれて書いたのが『人間の証明』だった。77年に映画化され770万部の超ベストセラーとなり、証明という言葉は流行語にもなった。

 33年、埼玉県熊谷市に生まれる。家業は足袋店だったが父は個人タクシー業に転業。12歳の夏に空襲に遭い、悲惨な光景が記憶に焼き付いたという。熊谷商業高校を卒業して自動車部品会社に入るが、思い直して青山学院大学英米文学科に入学した。在学中の登山体験は多くの作品に生かされることになる。

 卒業後、新大阪ホテル(現・リーガロイヤルホテル)に就職し、東京にある同系列ホテルのフロントマンとして働く。近くに出版社があり、定宿にしていた梶山季之から預かった原稿を密かに読んで習作した。後に梶山に告白すると「君は俺のモグリの弟子だね」と笑ってくれたという。

 この時代に本社総支配人の姪と結婚するが、ホテルニューオータニが開業するのを機に転職し、合計で9年間ホテルマンを続けた。65年にペンネームで『サラリーマン悪徳セミナー』を執筆。34歳でビジネススクール講師となり最初の長編『大都会』を刊行するが、5000部刷って300部しか売れなかった。

 69年、周囲の勧めもあって『高層の死角』を江戸川乱歩賞に応募し、ホテルを知り尽くした「二重密室」などのトリックが評価され受賞する。73年には初の週刊誌連載小説『腐蝕の構造』で日本推理作家協会賞を獲得した。

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source : 文藝春秋 2023年10月号

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