野見山暁治、牛尾治朗、木滑良久、大場智満、ミラン・クンデラ

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偉大な業績を残し、世を去った5名の人生を振り返る追悼コラム

★野見山暁治

野見山暁治 ©共同通信社

 画家でエッセイストの野見山暁治(のみやまぎょうじ)は、戦後日本の抽象画を主導するとともに、独特の味わいを持つ文章でもファンを楽しませた。

 2014(平成26)年、文化勲章授章を伝える電話があったとき、野見山は「絵は自分の課題として描いてきたので、受章してよいかどうか、すこし考えさせてください」と答えた。このとき93歳だったが、なおも作品に精力的に取り組んでいた。

 1920(大正9)年、福岡県の穂波村(現・飯塚市)に生まれる。父はいわゆる山師で、筑豊の石炭鉱脈を掘り当て炭鉱経営者となる。子供の頃から画家になりたかったが、父は「許さん」といった。旧制中学時代に肺浸潤を患い、東京美術学校(現・東京芸大)を卒業後、応召して満州にいるとき再発して帰国する。

 戦後、作品を発表するようになり、フランスに渡って日本から妻を呼ぶが、1年後、妻は癌で亡くなってしまう。それでも12年間滞仏し、抽象画で高い評価を得て、58(昭和33)年には「岩上の人」が安井賞を受賞した。

 68年、東京芸大助教授となり、4年後に教授に就任。学生の指導をしながら次々と作品を発表した。芸大を退官したころ帰郷すると、父は「バレたのか」と聞いたという。息子は人を欺いて教授になったと思っていたらしい。

 この間、76年にNHKテレビから、戦没画学生45人の遺族取材を依頼されて、翌年に『祈りの画集』として本にまとめる。さらに、信濃デッサン館(現・残照館)の窪島誠一郎と共に、彼らの絵を収集し、同分館の無言館に展示する作業を続けた。「生き残った自分の使命なのだと思いました」。

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source : 文藝春秋 2023年9月号

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