ウクライナ戦争に続いて、中東で戦闘が始まった。ハマスのイスラエルに対する無差別攻撃に対してイスラエルは報復を始めた。イスラエルとサウジアラビアの関係正常化は大きく後退するだろう。パレスチナを無視し、イランをただ敵視する中東和平は持続しない。
12年半続けてきた「新世界地政学」の最終回を、このような凄惨な国際政治の状況を前に迎えることになろうとは思ってもいなかった。
いま必要なのは、地政学的なリテラシーである。人間社会にあって変えられないことと変えることができることを区別すること、そして、過去の国々の行動の成功と失敗から学び、それを現在の挑戦に応えるべく活かすことである。
以下、地政学リテラシーの7箇条を記したい。
1.国際システムは、自己保存だけを考える赤裸々な国家を単位とする本来的にアナーキーであり、弱肉強食の世界である。
「中国は大国だ。あなた方は小国だ。それは厳然たる事実だ」
2010年7月、楊潔篪中国外相(当時)がASEAN地域フォーラム(ARF)外相会談でASEANの外相たちをにらみつけて吐いたこの言葉が、2010年代に始まった「危機の20年」の時代の幕開けを告げた。そのことをまず、認識する必要がある。
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source : 文藝春秋 2023年12月号