伊藤計劃が生きていたなら、今年で50歳になっていたのだそうだ。
ついては一文をという依頼を前に、こうして考えあぐねている。
亡くなってから次の3月で15年。月並みながら、もうそんなに時間が経ったのかと信じられない。
ともに同じSFの賞に落ち、他の出版社に拾われてデビューする、という出会い方をした。ほんの2年と少しのつきあいだったが、そういえばそれ以上に親しくなった作家もいない気がする。単にわたしの人づき合いが悪いだけということはある。
元来わたしは、生前につきあいのあった一人にすぎないのだが、某編集氏の提案により、構想段階の遺稿を引き継ぐという仕事をした。それもあってか、代弁者や同志と見なされることがままある。
遺稿の舞台は、死者を労働力として利用している世界。死が迫ることを感じつつ、そんな小説を構想していたということになる。
当然、死後に自分が死者として働かされることにも想定は及んでいたに違いなく、一言で言えば人が悪い。そういう切実な悪い冗談につきあう者など他にいないだろうということで、どう考えてもうまくいくはずのないその仕事を受けた。
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source : 文藝春秋 2024年3月号