伊藤計劃が生きていたなら、今年で50歳になっていたのだそうだ。
ついては一文をという依頼を前に、こうして考えあぐねている。
亡くなってから次の3月で15年。月並みながら、もうそんなに時間が経ったのかと信じられない。
ともに同じSFの賞に落ち、他の出版社に拾われてデビューする、という出会い方をした。ほんの2年と少しのつきあいだったが、そういえばそれ以上に親しくなった作家もいない気がする。単にわたしの人づき合いが悪いだけということはある。
元来わたしは、生前につきあいのあった一人にすぎないのだが、某編集氏の提案により、構想段階の遺稿を引き継ぐという仕事をした。それもあってか、代弁者や同志と見なされることがままある。
遺稿の舞台は、死者を労働力として利用している世界。死が迫ることを感じつつ、そんな小説を構想していたということになる。
当然、死後に自分が死者として働かされることにも想定は及んでいたに違いなく、一言で言えば人が悪い。そういう切実な悪い冗談につきあう者など他にいないだろうということで、どう考えてもうまくいくはずのないその仕事を受けた。
有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。
記事もオンライン番組もすべて見放題
初月300円で今すぐ新規登録!
初回登録は初月300円
月額プラン
初回登録は初月300円・1ヶ月更新
1,200円/月
初回登録は初月300円
※2カ月目以降は通常価格で自動更新となります。
年額プラン
10,800円一括払い・1年更新
900円/月
1年分一括のお支払いとなります。
※トートバッグ付き
電子版+雑誌プラン
18,000円一括払い・1年更新
1,500円/月
※1年分一括のお支払いとなります
※トートバッグ付き
有料会員になると…
日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事が読み放題!
- 最新記事が発売前に読める
- 編集長による記事解説ニュースレターを配信
- 過去10年7,000本以上の記事アーカイブが読み放題
- 塩野七生・藤原正彦…「名物連載」も一気に読める
- 電子版オリジナル記事が読める
source : 文藝春秋 2024年3月号