10月30日にはGoogle Playのセールスランキングで首位に立つなど、発売から9年目にしていまだ根強い人気を誇る『Fate/Grand Order』(フェイト/グランドオーダー、以下『FGO』)。2015年に配信開始されたスマートフォン向けゲームで、2004年に発売されたコンピューターゲーム『Fate/stay night』から始まったFateシリーズの一つだ。人気の理由は長年にわたって構築されたその独得の世界観。シリーズの生みの親であるシナリオライターの奈須きのこ氏に、Fateが生まれるまでの道のり、そしてゲームに込める思いを聞いた。
盟友・武内崇との出会い
――Fateの構想は、イラストレーター・武内崇さんとの出会いから始まったそうですね。武内さんはシリーズのキャラクターデザインの根幹を担うクリエイターですが、もともとは奈須さんの中学の同級生だとか。
奈須 そうなんです。今でこそ2人で会社の代表になっていますが(Fateシリーズを手掛けるゲームレーベル「TYPE-MOON」)、さかのぼれば三十数年ほど前、中学校に上がって初めてできた友達が、武内でした。その頃の自分は小説や漫画の文化にあまり触れていなかった。「自分が作れるもの」という認識もありませんでした。でも、武内は中学1年生のころから漫画家を目指す強い意志を持っていて、ルーズリーフに自分の漫画を描いていた。武内が漫画を描く姿を見て、単純ではありますが、「自分もやってみたい」という考えになりました。
――それで小説家を目指すようになったのですか?
奈須 これも武内が『エイリアン秘宝街』(菊地秀行著、ソノラマ文庫)という本を貸してくれたのがきっかけです。世界屈指のトレジャーハンター・八頭大(やがしら・だい)が冒険する伝奇SFの名作ですよね。
自分はそれまで小説作品には教科書以外で触れてこなかったのですが、読んでみたらとても面白かった。菊地秀行の作品もハマったし、そこで自分も伝奇を書いてみたいと思って。武内と「漫画家と小説家、お互い大人になったらデビューしようぜ」と青臭い約束もしました(笑)。
読んだのはミステリーや伝奇小説が多いですね。山田風太郎の『魔界転生』も夢中で読んだ作品の一つ。深作欣二監督が映画化もしたのでご存じの方も多いと思います。自分が読み始めるきっかけは石川賢さんが描いた漫画版でしたが、その後、原作小説にもすっかりハマってしまいました。忍法である“魔界転生”によって天草四郎や宮本武蔵を生まれ変わらせてゆく、というストーリーは『Fate』にも影響を与えています。
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