興行収入が6.56億元(128億円)突破。大ヒットの理由とは?
映画『THE FIRST SLAM DUNK』は中国では4月15日、最高学府である北京大学で封切られた。場所は映画館やホールなどではなく、体育館である。27メートルもの幅の巨大スクリーンのまえにバスケットボールのコートが設えられ、その上に湘北高校のバスケットボール部5人の巨大ユニフォームが掲げられていた。
4000人もの観客がそこで映画を鑑賞し、映画が終わったあとには、テレビアニメ版のエンディングテーマ『世界が終るまでは…』を大合唱した。それはもはや映画の鑑賞ではなく、スポーツ観戦やあるいはコンサートに近い何かだった。実際、そういう感想を抱いた人が多いようだ。また、『スラムダンク』ファンの有名人、映画監督、俳優、タレントなども多く駆けつけた。
4月20日には全国で上映されたが、4月15日時点でのチケットの予約人数は99万人で、興行収入は4000万元を超えていた。そして、現在(7月下旬)では観客数は1807万人、興行収入は6.56億元(約128億円)を超えている。中国における最大のレビューサイトである「豆瓣」では、この映画に対する高評価は27万件を超えており、コメント数も13万件以上、さらに長いレビューは2800件を超えている。グッズやフィギュアの売れ行きも絶好調である。
映画館で見られる景色もまた、話題になっている。例えば、映画の主人公たちが所属する湘北高校バスケットボール部のユニフォームを着用して映画を鑑賞する人が多く見られた。まるでチームメイトの活躍を応援しているようであり、北京大学での封切りの時にバスケットボールのコートを設えたのと同じ心理の延長線上にあるものだろう。また、それとは別に映画が始まるとスクリーンをスマートフォンなどで撮影する人、動画を撮る人が大量にいたことが数多く報告されている。
なぜ、『スラムダンク』という日本のアニメは中国でここまでの社会現象を引き起こしているのだろうか。何かの作品がここまでの反響を引き起こすのは、単に「日本文化がブーム」と捉えることができないほど、あるいはそうするのがもったいないほど、複雑な背景と歴史があるのだ。
中国人が本作に熱狂する、その謎を解く一つの鍵は“世代”にある。
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source : 文藝春秋 2023年9月号