親トランプのジャーナリストに語った、西側への「重要なメッセージ」
2月6日、モスクワのクレムリンで元FOXニュースの司会者タッカー・カールソン氏が、ロシアのプーチン大統領に約2時間に及ぶ単独インタビューを行なった。その動画と記録は、ロシア大統領府によって2月9日、HP上に公表されている。
プーチン氏が米国人記者の単独インタビューを受けたのは、2022年2月24日のウクライナ侵攻後、初めてのことだ。それゆえにこのインタビューは、日本でも報じられ、大きな話題となった。たとえば朝日新聞(2月10日付)は次のように報じている。
〈プーチン政権は、一一月の米大統領選に注目が集まるこの時期の発信に向け、入念に準備した節がある。政権の影響下にあるメディアはカールソン氏のモスクワ到着直後から動向を報じ、歓待ムードを演出した。今回の取材動画を、新興国なども含めた国際的な世論工作に使うとみられる。欧米のウクライナ支援に暗雲が漂うなか、侵略を既成事実化するため、有利な条件で停戦交渉に入る機会をうかがっている可能性がある〉
この記事を読むと、インタビューでのプーチン氏の発言は、完全な「プロパガンダ(宣伝)」であって「情報的価値」は皆無であるように見える。「ロシアによる国際的な世論工作に乗せられてはならないので、ここでのプーチン氏の発言は無視したらいい」と。実際、日本での他の報道も似たような論調で、プーチン氏の発言の全体をフォローするような報道はほとんど見られない。
筆者は分析専門家なので、そのような態度はとらない。「情報操作」や「情報工作」の意図が含まれているとしても、まずはプーチン氏が発した“シグナル”を正確に受けとめることが重要だと考えるからだ。
このインタビューは、ウクライナ戦争、米ロ関係のみならず、プーチン氏の死生観、宗教観、価値観を知る上でも第一級の資料だと筆者は判断している。ただし本稿では紙幅に制限があるため、プーチン氏の発言からとくに重要と思われる箇所のみを紹介し、分析を加えたいと思う。
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source : 文藝春秋 2024年4月号