日本の顔 肥土伊知郎

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肥土伊知郎(あくと いちろう・ベンチャーウイスキー社長)
写真=佐貫直哉 (本社)

ウイスキー冬の時代を乗り越え成長し続ける

「今年で創業20年。あっという間でした」

 実家の造り酒屋の経営破綻に伴い、廃棄寸前だった原酒を守るためにベンチャーウイスキーを創業した肥土伊知郎(59)。自らの名を冠したイチローズモルトを発売し、それ以降地元・秩父でウイスキーを造り続けてきた。その深い味わいは愛酒家たちを魅了し、世界最高峰の品評会「ワールド・ウイスキー・アワード」では世界最高賞を6度受賞。イチローズモルトは、いまやジャパニーズウイスキーの代名詞ともいえる存在となった。

 来年には北海道で新たな蒸溜所も動きだす。事業は拡大しているが「製法は昔のスコッチウイスキーの造り方に原点回帰している」という。最高の味を届ける思いは変わらない。

「ウイスキーも人も、時間によって熟成する。『時は命』だと思って無駄にせず生きていきたい。そんな考えの下で造っています」

「時とともに成長する」。同社が掲げる社是の如く、肥土の挑戦は続いていく。

発酵段階の品質を確認。発酵槽にミズナラ材を使用するのは秩父蒸溜所だけ。同材を好む乳酸菌の働きが、イチローズモルトの個性につながる

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source : 文藝春秋 2024年4月号

genre : ライフ 企業 働き方 ライフスタイル