7月21日に参議院議員選挙の投開票が行われた。安倍晋三首相は、勝敗ラインを自民党と公明党の連立与党で過半数、すなわち63と定めていたが、この目標を軽く突破し、71議席(自民57、公明14)を得た。
自民は改選前の66から9議席減らしたが、2013年の参議院議員選挙は、民主党から自公が政権を奪取した直後で、自民に対して強い追い風が吹いた結果だった。今回、議席数のマイナスを極小化することが自民の課題だったが、それは予想を超えて成功したと評価される。
今回の選挙において、どのような争点も結局のところ「安定か混乱か」という問題に収斂した。
例えば、65歳から95歳まで夫婦で生活するのに2,000万円が必要であるとの金融庁の報告書に関して、野党が激しく政権を攻撃したが、説得力がなかった。
この仕組みは社会保障と税の一体改革という名の下、民主党政権と当時野党だった自民党と公明党が合意してできたものだ。自らの責任に口を拭って、年金問題を政争の具にしようとする旧民主党幹部だった野党政治家の姿は見苦しかった。
もっとも国民が諸手を挙げて自公を支持しているのではない。将来の生活に対する不安を誰もが感じている。しかし、政治には期待できない。となると自分の身は自分で守らなくてはならないという発想になる。ここから、「政治的混乱だけはもう起こさないで欲しい」という気持ちになる。
今回の参院選の投票率は、48.8%で前回の16年選挙よりも約6ポイント低下していることがそのことを端的に示している。棄権した有権者は、政治の現状を変える意思を持たないということだ。客観的に見れば、消極的に安倍政権を支持していることになる。一人一人が不安から生活防衛に走る。
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source : 文藝春秋 2019年9月号