中国の2019年第2四半期(4〜6月)の実質成長率が6.2%に留まった。過去27年で一番、低い数字である。2010年から2016年の税収の伸びは、公表された実質成長率より1.8ポイント低かったというシカゴ大学研究チームの分析もある。実際は、4%程度に成長鈍化しているのかもしれない。
この成長減速の発表に対して、トランプ米大統領は早速「米国が関税をかけたからだ。進出企業が中国から外へと拠点を移している」とツイートした。
トランプは中国のマクロ経済のファンダメンタルズを急所と見なし、そこを衝こうとしている。
現在、各国で中国の「アキレス腱の研究」がひそかに始まっている。この4月にも米国と同盟関係にある国の情報機関のチームが私どものシンクタンク(API)を訪れ、中国の「脆弱性」を列挙し、矢継ぎ早に質問をして帰って行った。同月末、私がワシントンを訪問したときにもこのテーマを研究している国防総省の担当者と意見交換した。
膨れ上がる民間債務、ゾンビ化する国有企業、BRI(一帯一路)案件の不良債権化、マラッカ海峡ジレンマ、半導体はじめグローバル・サプライ・チェーンのチョークポイント、富と機会の格差拡大、党官僚の腐敗、環境破壊、少数民族の蜂起とテロ……ただ、意見交換するうちに、中国の長期的かつ根源的な最大の「脆弱性」は水ではないか、と思えてきた。
中国は、水が絶対的に不足している。水の量と質を確保できていない。国連は、国民1人当たり1年間の水資源量を、1,700㎥、1,000㎥、500㎥の3つのレベルでそれぞれ「水ストレス」「水不足」「絶対的水不足」と分類しているが、中国北部の8省は「絶対的水不足」、11省は「水不足」にある。
黄河の水資源はいま、1940年代の10分の1に縮んでいる。黄河流域地域では、過去50年間にそれが半減した。1997年には黄河の水が干上がってしまい渤海湾に届かない“断流”現象が年間226日に達した。最近の調査では、川が汚染され黄河の水の10分の1は農業に適していないと診断されている。さらに気候変動もあって乾燥が進んでいる。2000年、朱鎔基首相はこのままでは将来、首都北京を遷都せざるをえないと警告した。
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source : 文藝春秋 2019年9月号