日本政府は、7月から韓国向けの半導体素材の輸出規制を強化したほか、8月28日、輸出手続きを簡略化できる「ホワイト国」(輸出優遇国)のリストから韓国を外す政令改正を施行した。
韓国は、日本政府のこの方針に抗議し、日本をやはり「ホワイト国」から外し、それに加えて北朝鮮の核・ミサイル開発・発射などに関する日韓の軍事情報共有を可能にする枠組みである軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を「終了」させるとの声明を発した。
日韓では、戦時中に朝鮮半島から労務動員された元徴用工への補償問題がくすぶっている。韓国の大法院(最高裁)は昨年秋、元徴用工問題をめぐり日本企業に賠償命令の判決を下した。韓国の司法当局は、日本企業の株式を現金化する手続きを進めている。日本政府は、韓国政府に請求権協定で定められている仲裁委員会設置を求めてきたが、韓国政府は応じない。
日韓は濃密な経済相互依存関係にある。経済規模は、日本は世界3位、韓国は世界12位。日本の規模は韓国の約3倍である。貿易で見ると、日本の韓国への輸出は日本全体の6.6%、輸入は4%。一方、韓国の日本への輸出は韓国全体の5.3%、輸入は9.6%。日本のかなりの出超となっている。
この不均衡は、韓国が半導体などの部品、素材を日本に依存している構造的な要因が大きい。韓国は、世界2位のサムスンと世界3位のSKハイニックスという世界有数の半導体メーカーを擁している。しかし、その部品や素材の多くを日本に依存している。とりわけ、フッ化ポリイミド、レジスト、フッ化水素の3素材は、日本が世界シェアの8割を超える。
韓国経済研究院は、韓国企業が必要とする半導体素材が30%不足すれば、韓国の国内総生産(GDP)は2.2%減少すると試算している。韓国銀行(中央銀行)は、日本の半導体素材の輸出規制は韓国経済に対する3大リスクの1つとの見方を示している。
日本政府部内では、文在寅政権に対する「アラート」(警報)を発する上で、「チョークポイントがどこか」、さらには「日本がどのようなレバレッジを持っているか」についてかなり詳細に検討したようである。
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source : 文藝春秋 2019年10月号