「アメリカは自己啓発本でできている ベストセラーからひもとく」尾崎俊介さんインタビュー

著者は語る

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尾崎俊介氏

 アメリカ文学を専門とする尾崎氏は、日本で数少ない自己啓発本の研究者だ。

「女性向け恋愛小説『ハーレクイン・ロマンス』の研究が一区切りを迎え、次は読者の多くが男性である自己啓発本でアメリカを読み解こうと考えました。そうして自己啓発本を手に取ったら、想像以上に面白い。気づいたら研究を始めて10年が経っていました(笑)」

 日本とアメリカは、実は世界有数の自己啓発本大国だ。本書では特に、なぜアメリカで自己啓発本が読まれるのか、歴史や社会背景とともに繙いていく。

尾崎俊介『アメリカは自己啓発本でできている ベストセラーからひもとく』(平凡社)3080円(税込)

 建国当初のアメリカは、ピューリタニズムに加え、厳格なカルヴァン主義が主流。人間は神の定めた運命のまま、その生涯を終えるものだった。

「そこに神学者スウェーデンボルグ由来の潮流・ニューソートが普及します。ニューソートによれば、人の役に立つ仕事に邁進すれば、この世のうちに自らの周囲を天国に変えられる。自分の運命は自分の意志で変えることができるのです」

 この新たな考えは、神の定めを絶対視するカルヴァン主義へのアンチテーゼとして影響を強めていく。

 そんなアメリカで誕生した最古の自己啓発本が、「建国の父」ベンジャミン・フランクリンの『フランクリン自伝』だ。ここでは如何にして貧しい出自から立身出世を実現させたのかを回想しつつ、節制を心掛けることや、向上心、勤勉さの重要性が唱えられる。自己啓発本の始まりは、「ただひたすら努力せよ」という極めて健全な修身本だったのだ。

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source : 文藝春秋 2024年6月号

genre : エンタメ 国際 読書