上白石萌音から加藤シゲアキまで総勢20人が本屋さんを応援
クリエイティブディレクターといういかにも今風な、時には怪しげとも取られる横文字の職業についているために、何か常に最先端のテクノロジーに触れている印象を持たれることも多いが、実態は、いまだに物体としての本を持ち歩き、YouTubeを見ることもほとんどない。
だからこそ、街の本屋が減りつつある今の状況については胸を痛めていた。知っている本屋、通っていた本屋、よくしてくれていた本屋がどんどん姿を消していく。痛恨だったのは、地下鉄六本木駅の出口のすぐそばにあった書店、ブックファースト六本木店が、2021年に閉じてしまったことだ。わたしの会社のオフィスの最寄駅であり、人生で一番長く時間を過ごしている町、六本木の入り口にある象徴的な書店。
客としてもよく通っていたし、著者としても、新刊を出すたびに入り口そばの大きな棚に置いていただいていた。売れ筋の本や新刊を堂々と正面に陳列しつつも、入り口から見やすい側面の壁に、わりとクラシカルな本やマニアックな本もしっかりと並べる。通うに足る本屋だった。
そのブックファースト六本木店がなくなってしまった。最後の営業日、仕事の合間に駆けつけて、両手に抱えるほどの本を買った。中には自分の著書もあった。ずっと置いてくれていたその気持ちに応えたいと思った。
“木曜日は本曜日”
2022年8月のある日、早稲田大学を卒業して以来15年間一度も連絡をとっていなかった柴崎さんという先輩から、Facebookのメッセンジャーで連絡が来た。
柴崎さんは大学卒業後、数社を経て、実家の書店を継いでいた。また、東京都書店商業組合に加盟しており、その組合の事務局としての相談だった。内容は端的にいうと、書店を救ってほしいということだった。東京都が、コロナウィルスとその対策によって危機的状況に陥っている商業組合に対して補助金を出す。だがその補助金は何にでも出すわけではなく、インターネットを通じた効率的な集客・販売促進の手法を提案した商業組合に限るのだという。時間も予算もかなり厳しい条件の仕事だったが、東京都への提案までは極めてスムーズに進んだ。
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source : 文藝春秋 2023年5月号