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〈二〇二〇年八月に夫がいなくなってから二年を過ぎる頃まで、何を見ても彼を思い出す日々が続いた〉こう始まる本書は、作家の青木冨貴子氏が夫との33年間を振り返るスケッチ風の回想録だ。
青木氏は、戦場カメラマン沢田教一を描いた『ライカでグッドバイ』でデビューし、その後『ニューズウィーク日本版』創刊のため渡米する。夫は“ニュージャーナリズムの旗手”として一世を風靡したコラムニストで小説家のピート・ハミル氏。山田洋次監督の『幸福(しあわせ)の黄色いハンカチ』の原作者としても知られる。
2人の出会いはあまりに“運命的”なものだった。『諸君!』の企画で1984年3月、東京のパレスホテルでハミル氏にインタビューした青木氏は、偶然にも翌日、「ニューヨークで働かないか」と打診を受ける。ハミル氏に手紙でそう伝えると、〈なんて良いニュースだろうか!〉と手放しの歓迎を受け、数年後、紆余曲折を経て結婚に至るのだ。
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青木氏がハミル氏から教わったのは、彼が愛するニューヨークとそこに住む人々だ。彼らも本書の“主人公”である。
〈彼の友達は新聞記者や作家だけでなく、映画関係者(略)など数えきれなかった〉が、〈理髪店やコーヒー・ショップで働く移民たち、アパートの用務員とか駐車場の受付係といった隣人たちとも友達のようにつき合った〉。
「ジャーナリズムに文学を取り込んだ」とハミル氏は評される。
〈ここにおさめた物語は、一九六〇年代に入って書きはじめた。その頃私は(略)戦争、暴動、暗殺、デモの取材にあたっていた〉〈しかし、群衆が個人を放逐した観のあったあの時代、(略)依然としてよりささやかなドラマを生きている人間たちがいることを、私は一方で承知してもいた〉〈主題は人生における危機の瞬間であり、愛とその不在であり、都会の孤独であり、忍びよる過去の重みである〉(『ニューヨーク・スケッチブック』)
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source : 文藝春秋 2024年7月号