昭和29(1954)年に数学におけるノーベル賞といわれるフィールズ賞を、昭和59(1984)年にウルフ賞を、どちらも日本人として初めて受賞した小平邦彦(1915〜1997)。親交の深かった数学者・藤原正彦氏が、在りし日の思い出を綴る。
アメリカから32歳で帰国し、2年間に5度のお見合いをした私は1引き分け4連敗と無惨な結果だった。そんな折、大学からの帰り道で、私の学生がその高校時代の友人と歩いているのに出くわした。即座に運命の人と確信した。一回り年下のうえボーイフレンドの多い彼女だったから8ヵ月ほどかかったが、ついには私の毒牙に掛かりプロポーズを承諾してくれた。中年にさしかかった男がうら若い小娘を騙した、と思われそうだったので、私は地味な学士会館で仏滅の日に、できる限りひっそりと式を挙げることを提案した。彼女は私の気持を察しすべて同意してくれた。仲人を決める段になって一悶着おきた。私は身近な教授の誰かに頼もうと考えていたのだが、彼女がなかなか色良い返事をくれない。そのうちに先方の希望が分って驚いた。小平邦彦先生だったのだ。
有料会員になると、この記事の続きをお読みいただけます。
記事もオンライン番組もすべて見放題
初月300円で今すぐ新規登録!
初回登録は初月300円
月額プラン
1ヶ月更新
1,200円/月
初回登録は初月300円
※2カ月目以降は通常価格で自動更新となります。
年額プラン
10,800円一括払い・1年更新
900円/月
1年分一括のお支払いとなります。
※トートバッグ付き
有料会員になると…
日本を代表する各界の著名人がホンネを語る
創刊100年の雑誌「文藝春秋」の全記事、全オンライン番組が見放題!
- 最新記事が発売前に読める
- 毎月10本配信のオンライン番組が視聴可能
- 編集長による記事解説ニュースレターを配信
- 過去10年6,000本以上の記事アーカイブが読み放題
- 電子版オリジナル記事が読める
source : 文藝春秋 2024年8月号