災い転じて首脳外交

巻頭随筆

岡村 善文 アフリカ開発会議担当大使
ニュース 国際

 先月末に、横浜でアフリカ開発会議(TICAD)が行われた。1993年以来回を重ねて第7回目。安倍総理の呼びかけでアフリカ各国首脳42人が参加。アフリカとのビジネスや、社会開発、平和と安定への方策について協議した。

 安倍総理は2013年の第5回(横浜)、2016年の第6回(ナイロビ)に続き3回目のTICAD。すでにアフリカの首脳の誰とも顔見知りである。

 個人的な知遇は外交の鍵だ。とりわけアフリカでは大統領の権限が大きく、何事もその鶴の一声で決まる。重要な懸案について、総理が「頼むぞ」大統領が「分かった」、それで動く。

 2012年、第2次安倍内閣が成立した。私は外務省でアフリカ部長。総理にできるだけ多くの大統領たちと知り合ってもらいたい。第5回TICADでアフリカ各国首脳と会談していただいた後も、引き続き面識の機会を作ることが課題だ。そこで私の過去のとんでもない災難が活きた。

 8年前、私はコートジボワールという西アフリカの国で大使をしていた。内戦で分裂した国が、ひとまず和平合意に至り、国連の支援も得て大統領選挙が行われた。そうしたらなんと戦争になった。現職のバグボ大統領が敗北を認めず、真の当選者は自分だと主張したからだ。当選したウワタラ候補との睨み合いが数カ月続いた後、武力衝突に至った。

 市街戦が続く中、2011年4月6日、日本大使つまり私の公邸が襲撃されるという事件が起きた。20人ばかりの傭兵が、ロケット砲を公邸に撃ち込み、中になだれ込んできた。私は現地職員たちとともに、一室に籠もって攻撃をしのぎ、15時間後、フランス軍の特殊部隊により救い出された。

 私の命のために尽力してくれた多くの方々に感謝してもしきれない。何より、危険を冒して私を救出したフランスにも感謝だ。と言って、何事にも裏の事情がある。

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source : 文藝春秋 2019年10月号

genre : ニュース 国際